2016年03月27日 公開
2023年07月03日 更新
『フォトリーディング』などの加速学習メソッドで全世界から支持を集めるポール・シーリィ博士と、経営コンサルタントとして常に最先端の知識でビジネス界をリードし続ける神田昌典氏。2015年10月にシーリィ博士が、「知識創造サミット2015」での講義のため来日したタイミングに合わせ、2人の碩学の対談が本誌でついに実現。「なぜ、我々は常に時間に追われているのか」「なぜ、なかなかすべきことに手をつけられないのか」について、縦横に語っていただいた。
神田 近年、「時間管理」に悩む人が非常に多いですが、個人のタイムマネジメントツールはどんどん進歩していっています。手紙がFAXになり、電子メールが生まれ、今はそれよりはるかに手軽なチャットがある。でも、不思議なことに、時間はさらに足りなくなっています。
シーリィ これは日米問わず世界共通ですが、時間管理における最大の問題は「コミットメントの競合」にあります。これには二つの側面があり、一つは、緊急を要することが同時に複数、発生してしまう場合です。あちこちで緊急事態が発生し、常にその火消しに追われているような状態。これは、いわば外的要因による問題です。
ただ、もう一つ、より大きなものとして「内的な優先順位の競合」があります。今すぐすべきことがたくさんあるのに、なぜか関係ないことを始めてしまったり、遊びに出かけてしまう……。これは自分の内部でさまざまなコミットメントが競合し、本来なら今すぐ解決すべき問題にフォーカスできていない状態です。
神田 いつの間にか自分の内面が、仕事をやらないことを選択してしまう。なぜ、そんなことが起こり得るのでしょうか。
シーリィ これは、変化に対する免疫システム、具体的には「三つの恐れ」が、行動を妨げているからです。問題解決に必要な能力やリソースが自分には不足している、という恐れ。失敗したら自分は組織から放り出されてしまう、という恐れ。そして、誰も自分を支えてくれないのではないか、という恐れです。
神田 「変化に対する恐れ」は、私もよく直面しますね。たとえば以前、自分のチーム内の伝達手段として、メールではなく「チャットワーク」というアプリを採用しようとして、ものすごく反発を受けたことがあります。情報セキュリティはどうなのか、社員区分は……便利なのは明らかなのに、あらゆる理由で導入を妨げようとする。これを見ると、どんなに優れたテクノロジーが開発されても、内面の恐れが解決されないかぎり、人の行動は変わらないと思わざるを得ません。
更新:11月22日 00:05