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王様は見抜いていた!? リーダーとリズム感なき人々(ベナン)

2017年07月07日 公開
2017年08月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(23)石澤義裕(デザイナー)

王様は見抜いていた!? リーダーとリズム感に欠けた人々

ベナンの死亡原因の第1位は、マラリア。

外来者も入院患者も、その半分がマラリア。

それでも宿には蚊帳がないという、学ばない姿勢と大胆な危機管理。

おかげさまで、あちらこちらと痒いです。

 

国旗はゆるいのに、政策はゆるくないダホメー王国

ベナン共和国のルーツは、17世紀から19世紀にかけて栄えたダホメー王国。

小学生がいたずら描きしたような、ゆるキャラ国旗(ジト目の象さんはこちら)でほっこり感を演出しながらも、稼業は奴隷貿易です。

雨期が終わるとジャングルに遠征し、近隣の部族を掻っさらっていたのです。

奴隷の売値は、男なら15人、女性は21人で銃一丁。

ダホメーは文字を持ちませんでしたが、徴兵と徴税のために、石ころを使って国税調査をします。

子供が生まれたら箱に石を入れるという、斬新なローテクです。

19世紀に黄金期を築き上げた王様は、ゲゾ。

ゲゾ王は女性兵士を採用した戦略家で、その数は5000人とも8000人とも言われ、裸足で戦います。

アマゾネス軍団と聞けば、日活ロマンポルノ風の艶(なまめ)かしさを想像しますが、いまこうしてベナンのご婦人方を拝見するに、その立派な足腰と逞しい二の腕。みごとに盛り上がった胸とお尻。

みなさん大関級。確かに強そうです。

 

アフリカ随一のビジネスマン、ゲゾ王

アマゾネスが活躍したおかげで、仕入れに事欠かないダホメー王国。

しかし輸出が増えれば増えるほど、献身的な奴隷の働きによって顧客先の農業生産量が増えてしまい、やがて農産物の価格は下落。奴隷貿易の利益もまた、減少します。

奴隷商売の限界に気づいた王様ゲゾは、新しい商売に乗り出します。

アブラヤシの栽培です。

パーム油を生産し、欧米諸国に輸出したのです。

これが当たって新しい時代を築くのですから、いつまでたっても発展しないアフリカだなんて言われていますが、優秀なビジネスマンもいたのです。

名経営者ゲゾは、名言を残しています。

「私たちの自由は、水を蓄えることのできない穴だらけの壷のようなものだ……」

穴だらけのツボとは、まさにアフリカクオリティ。

「もし、この国の息子たちである、あなた達それぞれが穴を指でふさぐことができれば……」

壺の穴に、指を突っ込むわけですね。

「壷は水を蓄えることができるだろう」引用はWikipediaより

この言葉をもってして、国民に団結を訴えたのです。

おっしゃる通りです、王様。

まさにご心配した通りでございまして、21世紀になりましても、杞憂はそのまま杞憂です。

壺から水が、ダダ漏れです。

アフリカ人をとっ捕まえて栄えたダホメーは、アフリカ人の混成軍に攻められます。

奴隷にされた部族の恨みを利用したアフリカ人によるフランス軍は、アマゾネスを打ち破り、征服。

半世紀前にフランスから独立したのが、現在のベナン共和国です。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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