2017年07月01日 公開
管理職になると、「これは自分がやらなくては」と仕事を抱え込みがちになる。だがチーム全体の生産性を考えれば、それは逆効果だと冨田氏は指摘する。
「私の経験でも、マネジャーの仕事の8割は部下に渡して大丈夫です。むしろ重要で難しい仕事ほど、部下に渡したほうがいい。そして自分は、チーム全体のPDCAがきちんと回っているかのモニタリングとそのサポートに徹します。重要な仕事ほど、やり遂げた際のインパクトも喜びも大きく、その機会をできるだけ多く与えることが部下のモチベーションを高め、成長につながります。結果的に、チーム全体で高い成果を出せるようになるのです」
ただし、モニタリングと言っても、部下の行動を逐一監視するわけではない。
「私自身、直属の部下については『PDCAがきちんと回っているか』の一点のみしかチェックしません。鬼速PDCAでは、一般的なKGI(Key Goal Indicator)やKPI(Key Performance Indicator)に加え、『どれだけ計画を実行できているか』を表わすKDI(Key Do Indicator)という独自の指標を設け、プロセスを可視化します。たとえば、『知識習得のために本を読む』というDOに対して『週2冊ペースで20冊読む』というKDIを設定するのです。こうすれば、進捗具合は一目瞭然。上司は部下が今、何をしているのか逐一気にせず済み、部下も上司に余計な口出しをされず、お互いラクになれます。
この関係を構築するには、チームでPDCAを回す仕組みを作るといいでしょう。当社では3日に一度『半週ミーティング』を開き、専用の進捗管理シートで全員の行動計画を共有しています。こうしたフレーム(枠組み)を日常に組み込んでしまえば、いちいち考えなくても無意識レベルでPDCAが回るようになります。『何も考えなくてもPDCAが回っている』、これが理想の状態です」
こうした説明を聞くと、「鬼速PDCAとは、ひたすら高速で仕事を回す機械的な仕組み」だと思うかもしれない。だが、冨田氏率いるZUUの雰囲気はそのイメージとは真逆で、社員同士のコミュニケーションが活発な職場だという。
「当社の職場は、“雑談ウェルカム”です。社名の『ZUU』には『動物園のように、多くの国から多種多様な人が集まる組織』という意味も込めていて、そのとおり人が集まっているのに、シーンと働いていたらもったいないですよね。ミーティングも大笑いしながらワイワイやっていたりして、企業理念の一つである『お祭り騒ぎ』のとおりの光景が見られます。気軽なコミュニケーションは、チームの信頼関係を築くのに不可欠。打ち解けていない人との意思疎通は難しく、そのぶんPDCAが回しにくくなります。
雑談もそうですが、一見ムダなことの中にも大切なものはあるし、その逆もあります。見極めるには、PDCAを回し続けるしかありません。明確な目標を立て、優先順位をつけ、やることを絞り込み、結果が出れば『ムダではなかった』とわかる。この積み重ねが実力と自信を育てます。PDCAは、プロジェクトや問題解決のときだけ回すのではなく、常に回し続けることで本領を発揮するのです」
《『THE21』2017年8月号より》
更新:11月25日 00:05