2017年06月26日 公開
2023年04月06日 更新
では、起こってしまったミスを再発させないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。ミスの防止策はさまざまありますが、少ないコストですぐに十分な効果を発揮する解決策を講じることが肝要です。
ミスが起きたときに、「これからは気をつけましょう」と注意を促すだけの職場がありますが、これではミスを防ぐことはできません。「ミスを防ぐ手立てはなかったのか」「そもそもミスが起きるような作業をする必要があったのか」など、あらゆる角度から見直す必要があります。
そこで、「ファックスを間違えて送ってしまった」というミスを例に、最適なミスの防止策を導くための考え方を解説します。
①前提条件の問題だ ミスが起きるような仕事はそもそもしない、という考え方。「ファックスを使わずにその仕事をできないか」を考えてみます。
②やり方の問題だ 仕事のやり方や手順が適切ではない、という考え方。「ファックスの送り先の番号を手で押すやり方」が問題なら、「相手先番号を登録する」など作業手順を改良してミスを防ぐ方法を考えます。
③道具と装置の問題だ 仕事で使っている道具が適切ではない、という考え方。「ファックスを使うことが問題」と捉え、「電子メールを使う」など他の道具を使うことを考えます。
④やり直せればよい ミスしたあとに間違いを修正してやり直せれば問題ない、という考え方。「ファックスを送信した直後に相手先に電話をかけ、正しく送られていなければ、正しい番号に送り直す」という発想です。
⑤致命的でなければよい ミスが引き起こす損害が許容範囲内に収まるように対策を打つ、という考え方。「機密書類は送り間違えてはいけないが、重要でない書類は送り間違えても気にしない」という発想です。
⑥認識の問題だ 考えようによっては、ミスが有益であることもある、という考え方。「送り先を間違えたことで、まったく見ず知らずの人に自社を宣伝できた」という逆転の発想です。
このように問題を多角的に検討することが、ミスを防止するための最善策を探り当てるにはとても重要です。
最後に、組織として問題解決に当たるための手法をご紹介しましょう。会社組織は部署ごとの縦割り構造で、それぞれの部署の利害関係があったりして、問題を共有したり、ともに解決することがないケースが多く見られます。
そこで新たに採用されているのが、「タスクフォース(特命作業班)」による問題解決です。タスクフォースは、さまざまな課題に対して、社内から広くメンバーが集まり組織されます。異なる部門や立場にあるメンバーが集まるからこそ、多様な視点から問題を捉え、議論することができます。たとえば、現場では「ファックスよりもメールがいいけれど我慢していた」と思っていたことを労務担当が初めて知ったり、そもそも部署間の書類のやりとりが必要なく、ファックスを送らなくてもよくなったなど、部署の壁を超えた連携で妥当な解決策が導き出されることもあります。
人間が関わっている限り、ミスは起こり得ます。職場において、「ミスは防ぎにくい」ことを念頭に置き、あらゆる防止策を講じることが、大きな問題にしないために必要なのです。
≪取材・構成:前田はるみ≫
≪『THE21』2017年6月号より≫
更新:11月25日 00:05