2017年06月26日 公開
2023年04月06日 更新
ミスが起こらないように個人で気をつけることは大切だが、会社という組織の中に問題の根源があることもある。職場で起こるミスをなくすためには、どのような対策を講じればいいのか、ヒューマンエラーの専門家にお話をうかがった。
人間が仕事をするうえで、ミスをなくすことは不可能です。しかし、事象が小さなうちにミスに気づいて方向修正をしたり、起こってしまったミスから、次に起こらないように対策を講じることは必要不可欠であり、それにより大きな間違いや事故を防ぐことは可能です。そして、大きな問題になる前に、ミスの芽を小さなうちに摘んでおく秘訣は、職場内のコミュニケーションにあります。
たとえばこんな例があります。1977年、スペイン領カナリア諸島のロス・ロデオス空港で起きたジャンボジェット機同士の地上衝突事故。583人もの犠牲者を出し、航空史上で最悪の事故となりました。当時、空港は濃霧がひどく、混雑していて、空港が閉鎖される前に離陸したい機長が確認不十分なまま飛行機を発進させ、別の飛行機に衝突したのです。
原因の一つは、管制官と交信していた副操縦士が管制官の指示を勘違いしたことでした。副操縦士はおかしいと思いつつも、離陸を急ぐ機長に意見を呈することができなかった。これが最悪の事故を引き起こしたのです。
副操縦士が「勘違いをした」という小さなミスが、大きな事故になってしまった根底にあったのは、コックピット内でのコミュニケーション不足でした。
このような大きな事故はそうそう起こらないと思うかもしれませんが、どんな職場でも、小さなミスを引き金にした大きな問題は起こり得るのです。
どの職場にも、ミスを全然しない人とうっかりミスばかりしている人がいるのではないでしょうか。しかし、ミスをしない人は、「ミスをしない」のではなく「ミスをしているように見えない」のです。もちろん、記憶力がいいなど個人の能力もありますが、ミスが少ない人は、仕事を抱え込まず、上司や周りの人たちに自分の仕事の状況を要所要所で知らせたり、確認を取って、もし何かあったとしても、問題にならない早い段階で軌道修正をしているのです。
一方、仕事を抱え込んでしまう人は、上司や周りの人とのコミュニケーションが不足したまま、自分の思い込みで仕事を進めがちです。また、先ほどの例のように、違和感を覚えても言い出せないこともあります。
誰もが言いたいことを言える雰囲気を作るには、全員が発言できる場を仕組みとして導入することが効果的です。たとえばある工場では、毎朝のミーティングで、「ミスや安全に関して思っていること」を全員が順番で発言する機会を設けています。指名された人は必ず発言するルールなので、「言うべきときには言う」という意識が全員に生まれるそうです。
更新:11月25日 00:05