2017年06月09日 公開
人への興味の赴くまま、心のこもった関係を築く重永氏。しかし、「経営者と社員」という関係上でもそれを徹底するのはなぜなのだろうか。
「人を大切にする企業であることを、社員に伝えたいからです。社員と同様、一人ひとり違った背景と要望を持つお客様に、マニュアルどおりの一律な対応をしてほしくない。その想いを伝えるためにはやはり、トップ自らが実践することが重要だと思います。私の行動を通して、心のこもった接客の重要性を知ってほしいのです」
店舗を対象とした研修では、「何人の顧客の顔と名前が一致するか」をよく質問するという。重永氏の基準では、10人くらいでは「猛省が必要」なのだそうだ。
「知っているお客様が増えるほど、接客は楽しくなるもの。こうした『馴染み』の感覚が最も大事です。馴染み客が増えるのは売り手の喜び、馴染みの店に来るのはお客様の喜び。双方の幸福感の中で信頼関係が築かれていく──それこそが商売の本質だと思います」
そのために、販売スタッフには、「『お客様貯金通帳』を作りなさい」と言っているという。
「『貯金通帳』というとお金を貯めるためという誤解を招きそうですが、お客様のお顔や名前、その方とのやり取りを、通帳にお金を貯めるように増やしていきましょう、という意図があります。
たとえば、来店された方にハーブティーをお出しして、『味はいいと思うけど、この香りはあまり好みではない』と言われたとしたら、『味についてはご理解いただけたので、次はお好みに合うような違う種類のものをお出ししてみよう』などと、気づいたことや次への課題をあとでメモする。お客様のお顔や名前だけでなく、その方とのエピソードも交え、ストーリーで覚えるとより記憶に残りやすいことは、私の経験からも実証されていることです。
後日お客様が来店されたときに、店のスタッフが自分の顔や前回のやり取りを覚えていたら嬉しいはず。こうやって『お客様貯金通帳』をどんどん上書きしていけば、『馴染み』のお客様も増えていくはずです」
更新:11月22日 00:05