2017年04月24日 公開
2023年01月18日 更新
今回は、『西洋骨董洋菓子店』や『大奥』など、数々のヒット作を世に送り出し続ける、よしながふみさんの短編集『愛すべき娘たち』をご紹介します。
本作は、主人公の雪子を中心に織りなす人間模様を綴ったオムニバス。とくに印象に残ったのは最終話で、自分の容姿にコンプレックスを持つ雪子の母・麻里のエピソードです。
小さな頃から、祖母に「お前は歯が出ていて肌が汚い」と刷り込まれて育った麻里は、自分を美しくないと思い込んでいます。そして、麻里はそんな無神経な発言をする祖母が大嫌いです。しかし、人並み以上の容姿を持つ母・麻里が、なぜ顔にコンプレックスを抱くのかが、雪子にはわかりません。そんなある日、祖母とアルバムをめくっていた雪子は、幼い頃の母の写真を見つけます。その写真を眺めながら、雪子は祖母に、母が自分の容姿にコンプレックスを持っていることを伝えます。それを受け、祖母は美貌を鼻に掛けた友人への反発から、ワザと容姿を褒めないで育てなのだと明かします。容姿を褒めてチヤホヤ育てられたらダメになってしまうと。それを聞いた雪子は「母というものは要するに一人の不完全な女の事なんだ」と心の中でつぶやくのです。
子育てでは、子供のために良かれと思ってやったことが裏目に出てしまうことが往々にしてあると思います。親も人間であり、完璧な存在ではないからです。ただ、それを理解したからといって、親を許せるかということは別の問題。むしろ、自分に近い存在だからこそ、許せないという感情が勝ってしまうのかもしれません。
親を許すとはどういうことなのか。また、自分が親になったとき、子供に愛情が正しく伝わるのか。様々なテーマを内包した味わい深い作品ですので、ぜひ手に取ってみてください。
執筆:漫画担当(S/N)
更新:11月25日 00:05