2017年03月31日 公開
2023年04月06日 更新
荒木氏自身、陸上競技の短距離選手として、大きな大会で実力を出し切れずに苦しんだこともあったのだという。荒木氏はプレッシャーを解消するには、「自分でコントロールできることだけに集中すべき」だと指摘する。
「周囲の期待はコントロールできませんが、期待の受け止め方はコントロールできるはず。今まで培ってきたことを全力で出し切るチャンスだと捉えればプレッシャーにはなりません。
また、自分でコントロールできない結果を気にするより、コントロールできる準備に集中することも大切です。『失敗したら』『期待に応えられなかったら』と結果ばかり気にしていると、実際にうまくいくよう計画を立てることも、それを実行することもできません。
本来、計画を立てて行動に移していれば、必ずそれに沿った結果が出てくるはず。とくに、スポーツではない分野はその差が顕著に現われます。ビジネスシーンはスポーツと違って、天候や風向き、相手のコンディションといった環境に影響を受けにくいからです」
そう考えると、スポーツの世界で一流と呼ばれる人のメンタルは相当強いのではないかと思いがちだ。だが、数々の一流アスリートと接してきた荒木氏の見解は異なる。
「メンタルが強い人とは、想定外のアクシデントが起きたとき、動じない人ではありません。不安材料を事前に徹底的に洗い出し、準備段階でそれを潰していく人です。だからこそ『どうしよう』と途方に暮れるような場面が減る。すなわち、何事にも対応できるメンタルが手に入るのです。
そもそも、想定外が起きること自体、準備が甘いということでもあります。自分のメンタルが弱いという自覚があるなら、想定外が起きないよう、あらゆる準備をして臨めばいいのです。そうすれば、過度の緊張や不安に苛さいなまれることはありません」
その最たる例が、2015年のラグビーワールドカップで日本が優勝候補の南アフリカに勝利した一戦だったという。
「対戦が決まった一年前から、ラグビー日本代表のエディ・ジョーンズヘッドコーチは南アフリカチームの情報を徹底的に収集、分析し、選手たちとともに戦略と戦術を練ってきました。そして『タックルしたら、すぐに全力で戻ってラインに参加する』など、あらゆる状況を想定して繰り返し練習をしてきました。さらに、試合前日には選手全員でスパイクを磨く、君が代の練習をするなどチームとしての準備を怠りませんでした」
だからこそ、強敵相手にも落ちついて堂々とした試合運びができた。想定外の可能性を極力減らし、対処法を用意しておくことが、ブレない心を作る近道だと言えるだろう。
次のページ
適切なフィードバックが部下のメンタルを支える >
更新:11月23日 00:05