たとえば、最近ではよく「ゼロベース思考」「ゼロベースで考える」といった表現がよく使われます。これまでの体験や知識にとらわれると物事に対する見方、考え方が固定化し、旧態依然とした思考しかできないからです。
「ゼロベース」と聞くと、「これまでの体験や知識などの記憶を捨て、ゼロにすること」だと思ってしまう人がいますが、そうではありません。記憶を捨ててしまえば考えるためのネタ自体がなくなってしまいます。
では、「ゼロベース思考」「ゼロベースで考える」とは、どういうことなのかというと、新しいつながりを作るために、すでにある記憶の間のつながりを断ち切ることです。
過去の経験や教えられた知識で、因果関係やストーリーなどで記憶同士がつながっています。そうなると、「○○は××である」「○○とはこういうものである」といったいわゆる「固定観念」が出来上がっています。
これをぶち壊すことが「ゼロベース」の意味です。
「ゼロベース思考」でも記憶は必要不可欠ですし、その質と量がその思考の結果を大きく左右します。そして、単に覚えるだけではなく、すでに持っている記憶に働きかけていく「記憶のマネジメント力」が問われているのです。
さらに、記憶同士を結びつけていく「思考」には、そのために記憶を呼び出していろいろな組み合わせを試していく作業領域が必要です。
そしてこれにも「ワーキングメモリ(作業記憶)」という記憶が絡んできます。このワーキングメモリという記憶をうまく活用するかどうかも思考の質に大きく影響します。
その他、集中力、コミュニケーション力、さらにはリーダーシップといった、一見記憶とはかけ離れているように思えるスキルにも「記憶」が大きく影響を与えていることがわかってきています。
あなたがまず取り組むべきはあなた自身の身近にある「記憶」であり、それを有効に活用するための「記憶力」なのです。
『記憶力が最強のビジネススキルである』では、認知科学の知見も参考に、さまざまな「記憶」とその働きを紹介しながら、あなたがビジネススキルを効果的に習得・活用するためのポイントを解説しています。
最後に、この記事を読んでいる人に多いと思われる「ノウハウコレクター」の方に役立つ「3つの記憶」を紹介しておきましょう。
「ノウハウコレクター」とは、こういった記事や本をたくさん読んだり、セミナーや講座に参加したりして、多くのノウハウを知っている、しかし、そのノウハウを活用できていない「残念な人」のことです。
「ウッ、自分のことだ……」と思われた人がいるかもしれません。
実は私自身も長い間、たくさんのノウハウを蓄えながら活用できないノウハウコレクターでした。
そんな元・ノウハウコレクターの私からお伝えしたいのが、次の「3つの記憶」です。この正体を知り、これをマネジメントすることで、あなたはノウハウコレクターから脱出できるでしょう。
その「3つの記憶」とは、「知識記憶」「経験記憶」「方法記憶」、この3つの記憶です。
「知識記憶」とは文字通り「知識」に関する記憶であり、「経験記憶」はあなた自身の「経験」に関する記憶です。
「方法記憶」が少しわかりにくいかもしれません。これは言葉で表わすことができない記憶であり、身体で覚える記憶です。たとえば、「自転車の乗り方」です。自転車の乗り方を説明しようと思っても、なかなかできないでしょう。
「サドルにまたがって、ハンドルを握って、ペダルを踏んで…」ということは言葉にできるにしても、だからといって自転車には乗れませんから。
ノウハウを知っているというのは「知識記憶」です。そこから本当にノウハウを活用できるようになるには、それを「経験記憶」に落とし込み、さらには「方法記憶」にまですることが必要なのです。
この「3つの記憶」を知ると、自分がどの段階にいるかがわかり、新たなノウハウを追い求めて悩み続ける「ノウハウコレクター」から脱出することが可能になります。
詳しくはぜひ、『記憶力が最強のビジネススキルである』をお読みください。
あなたがこれまで蓄えてきたノウハウをようやく活かすことができるようになるでしょう。もちろん、これから新たなノウハウ、ビジネススキルを身につける方のために、「覚える」ためのノウハウ、記憶術も紹介しています。ぜひご活用ください!
更新:12月04日 00:05