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自由闊達、臨機応変。流しのウェイターが働く国(セネガル)

2017年03月05日 公開
2017年08月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(19)石澤義裕(デザイナー)

乗客完全無視! 止まらない路線バス

最後にして最高の預言者、ムハンマドの教えを超法規的に逸脱したセネガル。彼らは個人の裁量を手にし、自由闊達、臨機応変に働きます。

例えば、路線バス。

がんじがらめの渋滞にぶつかると、運転手はひとことのエクスキューズもなくルートを変更。その道も混雑していると見るや、さらに隣のブロック。それでもダメならもう一丁。

あれよあれよと停留所から離れていくバスですが、顧客のニーズに縛られない即断即決と秒速の行動力。

運転手の背中に教えられます。
ルートよりも大切なこと……、それは走り続けること。

一部の乗客は捨て台詞を残して降りたような気がしなくもありませんが、それはそれ。
縦社会や村社会、義理人情の亀甲縛りで動きのとれない日本人には、決して真似のできない芸当です。

ちなみに昨日乗ったバスは、渋滞もしていないのにルートから外れていました。
普段目にすることのない住宅街に、乗客からため息がもれたものです。

 

画期的で合理的な「流しのウェーター」

セネガルで画期的なのは、流しのウェーター。
働きたいときに働ける完全歩合制で、本邦初公開の雇用形態です。

ある事件に遭遇して、知りました。

現場は、アメリカ大使館横の海辺の食堂。

ローカルの生伴奏と獲れたての生牡蠣を堪能し、ウェーターに勘定をお願いします。
想像より高いなぁと思いつつ清算した後で、やはりどう考えても高いので、カウンターのオーナーに訊ねます。

「計算を間違ってないですか?」

しばらく請求書を眺めたオーナー曰く、

「計算は間違っていないね。ただ……」

請求書に書かれた単価が、メニューより高かったのです。

新人ウェーターが書き間違えたのだろうと思い、差額の返却を求めたら、

「それはできない相談だね。ウェーターはどこの誰だかわからないから」

どこの誰だかわからないとは、意味不明の言い草です。
従業員ではない人物が、勝手に食堂で働いていたと言うのです。

じゃあ、身元不明の謎のウェーターがテーブルをまわってオーダーをとり、厨房に発注。単価に上乗せした請求書で自らの賃金を稼ぎ、正規代金をレジに支払って消えたって言うの?

「イグザクトリー!」

食堂は人件費が抑えられて、ラッキー。
多く支払ったのは、客の自己責任。
そんな理屈で微笑むオーナーなのです。


セネガルの宅配は、馬車。

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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