2017年02月23日 公開
2023年04月06日 更新
技術の進歩が著しい現代、ミドル以降の社員はついていくのに精一杯。一方、デジタルネイティブ世代は新しいツールを軽々と使いこなす。流通会社のベテラン社員T氏はこうこぼす。
「若い頃にちゃんと修得しなかったせいで、いまだにワープロは一本指。新入社員が笑っているのは知っていますよ。『よくそれで打てますねー』なんて言われたりして、結構傷ついているんですよ」
最新技術についていけない人に対する「テクノロジー・ハラスメント」なる言葉も存在している。中にはわざとわからないようなIT用語を連発し、けむに巻こうとする若手も。世代間の対立はどんな時代にもあったが、基本的には年長者が「経験と情報」で若手を押さえつけてきた。だが、現在は若手が「テクノロジー」という武器で40代、50代を翻弄する。
「テクハラ」よりもさらに直接的な攻撃もある。それが「エイジ・ハラスメント」、通称エイハラだ。年齢による差別を指すが、多いのは定年間際の社員への「当てつけ」だ。
一般に多くの企業では55~60歳で役職を外れる。今までは役職者と呼ばれていた人が通常業務に就くと、傍から見るとサボっているように見えるらしい。H氏もそんな目で見られている一人だ。
「『のんびりできていいですね』なんて言われると、やっぱり腹が立ちますね。別に好きで役職を降りたわけではないですし、給料だってそれ相応に下がっているわけですから...」
また、先行き不透明な時代、年金にしても退職金にしても、「本当にもらえるのだろうか」という不安を持つ若手や中堅は多い。そのフラストレーションが定年間際の社員にぶつけられることも。前出のH氏は言う。
「『逃げ切れていいですね』などと面と向かって言われたこともありますよ。そりゃ、若い人は大変だなと思います。でも、こうはっきりと言われてしまうと、今まで会社のために働いてきた自分の人生を全部否定されたような、悲しい気分になってしまいます」
大勢の人が働くオフィスだけに、互いに過ごしやすいようルールを守ることは必須だ。だが、それが行きすぎて人間関係がぎくしゃくしてしまう「不寛容なオフィス」になってしまってはいないだろうか。
今、世の中は「多様化」の時代だ。自分と違う常識を持った人たちともうまくやっていく「包容力」もまた、必要なのではないだろうか。
(『THE21』2017年1月号より)
更新:11月25日 00:05