2017年02月13日 公開
2023年02月07日 更新
「暴言王」と呼ばれながら、大方の予想を覆して米国大統領に当選したドナルド・トランプ氏。彼の発言は、なぜ多くの米国民の支持を受けたのか? トランプ氏が使う英語の特徴を、長年トランプ氏をウォッチし続けてきた浅川芳裕氏にうかがった。
英語では、音節の少ない単語を多く使っているほど、わかりやすい話をしていると判断されます。トランプ氏が、あるインタビューで、質問への回答に使った22単語をユーチューブ番組『Nerdwriter1』が分析したところ、78%が1音節、17%が2音節でした。合計すると9割を超えます。1音節の単語は「I」「go」など、2音節の単語は「problem」などで、日本の中学生でも馴染みがあるような簡単なものです。
3音節の単語は「remember」を1回、「tremendous」を3回使っているだけ。tremendousは「ものすごい!」「とてつもない!」「とんでもない!」という意味です。米国人もあまり使わないのですが、トランプ氏は強調語としてあえてよく使っています。
4音節の単語は、「temporary(一時的な)」と、地名の「California」だけ。カリフォルニアは地名なので使わざるを得ません。もう1つの「temporary」は日本の高校で習うレベルですが、トランプ氏はこの単語を発した瞬間、すぐに飲み込みました。「まずい! 使わないことにしている長い単語を使ってしまった」という感じでした。そして、ミスを帳消しにしようと、いきなり別の話に移ったのです。きわめて意識的に短い単語を選択している表われです。
また、「リーダビリティーテスト」という手法による分析によると、トランプ氏のスピーチに出てくる単語は米国の小学4年生レベルだということです。ヒラリー・クリントン氏は中学2年生レベル、サンダース氏は高校2年生レベルでした。
スピーチ中のセンテンスの長さの調査でも同様の結果になっています。トランプ氏は6単語という短いセンテンスを一番多く発しているのに対して、ヒラリー氏は12単語と倍の長さです。
このように簡単な単語と短いセンテンスしか使わないのは、トランプ氏に教養がないからではありません。アリストテレスが『弁論術』に「聞きなれぬ言葉を使うな」と書いているように、シンプルに話したほうが人を説得できるからです。
更新:11月22日 00:05