2016年12月20日 公開
2022年07月14日 更新
ピープル・デベロップメント戦略本部長・湯川高康氏
今年9月に週休3日制を検討すると発表して注目を集めたヤフー。同社の働き方の改革への取り組みは、現社長の就任以来、続けられてきたことだ。とくに今年10月に完了した新オフィスへの本社移転ではさまざまな試みがなされている。
新オフィスのコンセプトは3つ。1つ目は「ハッカブル」だ。「完成していない、改善の途上にある状態だということです。ネット業界はまだ発展途上にあり、当社もさらなる進化が必要です。新オフィスは、社員がその意識を日々高められるデザインにしています」(湯川氏)
むき出しの床材、測量の印が残る壁。工事中の状態をそのままにした空間が、「発展途上」であることを体感させる。
2つ目は「オープンコラボレーション」。デスクをジグザグに配置したフリーアドレスの座席は、動線をあえて複雑化し、社員同士のコミュニケーションの機会を増やす狙いがある。異なる部門の社員の接触が増えることで新しいアイデアの創出を期待しているのだ。
「私自身も他部門の社員と話す機会が大幅に増えたのを実感します。加えて、自分の部下とのコミュニケーションも密になったと思います。いつも目の前に部下がいるわけではなくなったことで、顔を見たら声をかけようという意識になりました」(湯川氏)
そして、3つ目が社員の健康を重視する「グッドコンディション」。社員食堂に良質な食材を使ったバランスの取れたメニューを用意するなど、心身の状態を整え、業務への集中力を高める施策を行なっている。好きな場所で働ける「どこでもオフィス」の制度を利用できる頻度も、試験的に月2回から月5回に増やした。
「これは、いわゆる『在宅勤務』ではありません。普段の業務では出席できないセミナーに出席するなど、自分の成長につながる時間の使い方をしてもらい、イノベーションにつなげてほしいと考えています」(湯川氏)
このように、ヤフーの働き方の改革の目的は、イノベーションが生まれやすい環境を整え、社員のパフォーマンスを向上させることだ。週休3日制という発想もここから生まれている。まだ具体的なロードマップができているわけではないが、ITの技術も取り入れながら、同時に地道な工夫も行なって、常に生産性の向上に努めている。
「研修やトレーニングによる意識づけはもちろん、整理整頓の徹底による探し物にかかる時間の削減など、現場レベルで改善できる余地はまだまだあります。オフィス環境も人事制度も、社員の声を吸いあげながら、随時改善を重ねています」(湯川氏)
《取材・構成:林 加愛(リクルートスタッフィングを除く)》
《写真撮影:長谷川博一(良品計画、ヤフー)、まるやゆういち(リクルートスタッフィング、パシフィックコンサルタンツ)》
《『THE21』2016年12月号より》
更新:11月22日 00:05