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残業を減らしながら業績を上げている会社は、何をしているのか?

2016年12月20日 公開
2022年07月14日 更新

良品計画/リクルートスタッフィング/パシフィックコンサルタンツ/ヤフー

 

パシフィックコンサルタンツ〔株〕
教育により「過剰なこだわり」にストップを

WLB推進事務局・油谷百百子氏

 鉄道や道路、駅、河川など、人々の生活を支えるインフラの調査計画や設計を行なうパシフィックコンサルタンツは、残業を5%削減させるとともに利益を2~3倍に増やすという快挙を成し遂げた。同社が残業削減につながる取り組みを始めたきっかけは、2009年に外部から講師を招いて労使共催で行なったWLB(ワークライフバランス)講演会だった。

「当社の社員の約8割は技術職。彼らは専門性が高く、自らの技術力に誇りを持っているために、人任せにできずに仕事を抱え込む傾向があり、それが残業の一因になっていました。

 また、お客様からの急な要望に応えるために残業することも多くありました」(油谷氏)

 WLBを進めた目的には社員が健康な生活を送ることや建設コンサルタント業界のイメージ向上などもあったが、「生産性向上」を掲げたことが成功の要因だった。

「WLBというと『生活を楽しむためにゆるく仕事をする』というイメージを持たれがちですが、実際は9~17時という限られた時間内で成果を求められる厳しいもの。お客様に対しても『いつでも対応します』ということを強みにすることができなくなり、本当の実力で勝負をしなくてはならなくなります。経営トップから社員に向けてのメッセージには必ず『限られた時間で成果を出す』というキーワードを入れ、長時間労働が当たり前の社員の意識を変えることを目指しました」(油谷氏)

 具体的な施策は、社員の自発性によるボトムアップと、トップダウンでの仕組み作りの両面で進められた。

 ボトムアップについては、組織の最小単位である「グループ」のいくつかがアイデアを出し、それを実践して成果を確認することから始めた。たとえば、あるグループは労働時間短縮をダイエットになぞらえた「WORK DIET」というビジョンを掲げ、ムダなメールのやり取りをやめるなどして業務のスピードアップを実現。こうした成功事例は全社に周知し、共有を図った。

 トップダウンでは、管理職への研修が行なわれた。

「技術者特有のやりすぎを防止するため、上司が部下にストップをかけるということが大切だと管理職研修で教育しました。上司も技術者気質が強く、自分の業務に没頭して部下のケアがおろそかになりがちでしたから、改めて『部下管理は上司の役割だ』という認識を持ってもらうことで、多くの改善ができました」(油谷氏)

 また、形骸化していたノー残業デーについても強化する取り組みを行なった。同社の働きかけにより、建設コンサルタンツ協会一斉のノー残業デーが、431の同業他社で実施されている。

「当社もまだまだ働き方に関して課題があります。業界の活性化のためにも、今後もこの取り組みを推進していきます」(油谷氏)

 

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