2016年12月20日 公開
2022年07月14日 更新
スマートワーク推進室・小野寺淑恵氏
社員数2,000人以上の人材派遣会社リクルートスタッフィングでは、2013年から「スマートワーク」のための取り組みを始めている。スマートワークとは、「限られた時間の中で、賢く・濃く・イキイキと働くことで、最大の成果を出すこと」と定義されている。
その結果、取り組む前の2012年度と比べて、2015年度の労働時間は4.17%減少。一方、売上生産性(売上げ÷労働時間)は6.55%上昇した。
「当社では2004年から女性管理職比率が30%を超えており、現在は42.3%。以前から男女問わず活躍できる組織風土は比較的あったと思うのですが、2012年に社員に対して行なったアンケートの結果、女性は男性ほど『将来、より高い役職を担っていきたい』『この会社で仕事と家庭を両立することは可能だ』と思っていないことがわかりました。『この男女の意識の差が現場で歪みを生んでいるかもしれない』という問題意識が、スマートワークの取り組みを始めたきっかけの1つです。
取り組み開始以降、営業職社員の営業成績と労働時間など、あらゆる営業成果と労働時間の関係性を調べたところ、相関関係はないという結果が出ました。そこで、残業時間の削減と成果は相反しないと判断し、スマートワークを実施することにしたのです」(小野寺氏)
実際の施策は、社長や担当役員によるトップコミットメントと、現場主動との両輪で行なわれた。トップが動かなければ変革は進まないが、トップが変わったら風化してしまう一過性の取り組みで終わらせないためには現場主動が欠かせないからだ。
「とくに効果が大きかったのは、年間労働時間の上限を設けたことですね。部署によって繁忙期が違うので、月間ではなく、年間で設定しました。
リクルートグループでは成果を出した社員の表彰が文化として根づいているのですが、この上限時間を超えた社員を出した組織は、全社表彰の選考にエントリーができません。表彰の軸そのものを変えたのは、トップの本気度の表われでした」(小野寺氏)
現場主動の施策は、取り組みの初年度は、「営業職とアシスタントが同じ作業を重複して行なっているので、それぞれの役割を明確にする」など、各組織の中での業務効率化が主だったが、3年目になると、「自部門の負担が増えても、会社全体として効率化が図れないか」という発想が増えてきたという。
「取り組みの結果、深夜労働は86%、休日労働は75%減少しました。終業後の時間を利用してグロービス経営大学院に通う社員の数が16倍になるなど、自己研鑽に励む社員も増えました」(小野寺氏)
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更新:11月22日 00:05