2016年10月05日 公開
2023年03月09日 更新
高度成長期には「精神論に根差す経営」、もう少し具体的に言うと「現場の実態を真摯に認識しようとしない経営、あるべき論を現場に押し付ける経営」であっても、フォローの風が吹く中でそれなりに業績を伸ばすことができました。
一方、本来の経営というのは、たとえば「仕事には失敗はつきものだ」という基本認識があります。失敗が起きたら「なぜそれが起きたか」を考え、失敗をできる限り少なくしていくのです。しかし、高度成長期に成功体験だけを重ねてきた日本企業の中には、社員に「失敗はあってはならない」というプレッシャーをかけ、失敗した社員を上から目線で責める、という圧力型マネジメントが常態化している会社が少なくありません。
経営陣のあるべき論と現場の実態との乖離が広がる会社では、現場の社員たちは「上司に言われたことはやるが、それ以上のことは何もやらない」という働き方を選択するようになっていきます。たとえ問題が発生しても、「会社の責任だから」と他人事のように見ている……そんな社員がこういう会社では珍しくありません。
要するに、会社にそんなつもりは毛頭なかったにもかかわらず、結果として社員に「考える力」を放棄させてきたのが現実なのです。
今でも日本企業には、こうした体質が根強く残っています。多数の海外拠点を持ち、一見するとグローバル化が進んでいるように見える会社も、ひと皮むけば20年前、30年前と中身は何も変わっていないことがあるのです。
特に私が危機感を抱いているのは、このままでは日本企業にチャレンジ精神のある海外の優秀な人材は集まらないということです。
シンガポールで人材を募集する時、どの国の企業が一番人気があると思いますか。
断トツの人気は、やはり欧米先進国の企業です。
「思う存分チャレンジしてみたい」「自分の実力でどこまでできるか勝負したい」と考える前向きな人は、ほとんどが欧米先進国の企業を目指します。
では、一番人気がないのはどの国の企業か。
もうおわかりでしょう。残念ながら、日本の企業です。
日本企業に入社してくるのは、「実力主義で競争が激しい欧米企業で働く気はないけれど、安定した給料はもらいたい」というモチベーションの低い人が多い。厳しいようですが、これが現実です。こんな状況では日本企業の国際競争力が高まっていくはずはありません。
日本企業もグローバル化で遅れをとっているという自覚はあるので、最近は海外でヘッドハントした外国人を経営陣に迎える会社も増えています。
しかし、ガバナンスを利かせるつもりがなく、外国人経営者に自由にやらせている時はともかく、ひとたびガバナンスを利かせ始めると結局は日本的な経営体質とぶつかってしまいます。その結果、目標を成し遂げる前に去っていくケースが少なくありません。
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更新:11月23日 00:05