2016年11月15日 公開
2023年05月16日 更新
この言葉からもわかる通り、谷田氏は現場のやり方にはいちいち口を挟まず、社員たちの自主性を尊重している。
「仕組みを作ったら、あとは待つのが経営者の仕事。オフィスにモノを置けない仕組みさえ作ってしまえば、社員たちは『では、どうすればいいか』と解決策を考えざるを得ない。社長の私が特に指示を出さなくても、社員同士が知恵を出し合い、『この書類とこの書類は内容が重複しているから、一本化しよう』といったアイデアがどんどん出てくるのです。こうして良いスパイラルに入れば、勝手に改革は進んでいきます。
先日もふと気づいたら、『○階が一番汚れています。気をつけましょう』などと誰かが書いた張り紙がしてありました。自発的にオフィスをきれいに保とうと声をかけ合っているわけです。環境を変えれば社員の意識もこれだけ変わるものかと驚いています」
タニタのオフィスには社長室はなく、谷田氏も社員たちと同様、フロアに置かれたデスクの一画で仕事をし、モバイルロッカーにモノを収めて帰宅する。
「仕事中に机の上に置くのは、今取りかかっている資料とパソコンくらい。作業が終わったら、保存が必要な資料はPDF化してパソコンに取り込み、紙は捨てます。そもそも社内全体の紙の量が減っていますし、社長室や自分専用のデスクがなくても、特に不便は感じません。
私はきれい好きな人間ですが、根は無精です。身の回りはきれいに保ちたいけれど、本音を言えば掃除をするのは面倒。だから、部屋やオフィスを汚さないための仕組み作りに力を入れるのです。たとえば、窓に使っているブラインドはすべて羽が縦向きのものにしています。横向きのものよりもほこりが溜まりにくいと考えたからです。
『根が無精だから、整理ができない』と考える人もいますが、私は無精だからこそ、仕事のやり方を改善できると思っています。書類が山積みになったデスクを何時間もかけて整理するのが嫌だから、『整理に労力を費やさずに済む方法はないか』と考える。そうすれば、『1日1分だけ片づければ、デスクをきれいに保てる仕組み』といったアイデアも生まれます。整理が苦手な人ほど、ぜひ『整理しなくていい仕組み作り』に力を入れてはいかがでしょうか」
《『THE21』2016年11月号より》
更新:11月22日 00:05