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今の日本で「イノベーション」は生まれるか?

2016年09月15日 公開
2023年01月16日 更新

高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)

総菜コーナーで見つけた新たなビジネスチャンス

 マーケティングの3要素に従って、顧客の問題解決を本質までさかのぼって考える。ここで高岡氏は1つの例を挙げた。

「『なぜ、コーヒーが売れないのか』を考えたとき、その原因の1つが人口減少にあるのは明らかです。ただ、スーパーの総菜コーナーに行くと、常に活況を呈している。それは、人口は減っているのに世帯数が激増しているからです。この30年間で合計世帯数は3,500万世帯から5,000万世帯以上へと増えているのですが、その大きな要因が、1人世帯、2人世帯の増加。だからこそ、少人数世帯にとって便利なサービスが伸びている。私は入社後の数年間、スーパーへの営業を担当していましたが、当時は総菜コーナー自体が少なかった。こうした生活スタイルの変化は、問題解決のヒントです。当然、コーヒーの飲み方も変わっているはずですから。

 そこで『顧客は誰なのか』を問い直し、1人や2人で暮らしている人々が求めているものは何かと考えました。彼らの抱えている問題は何か。4~5人家族であれば、お湯を多めに沸かしてみんなが一度に飲めるインスタントコーヒーは便利ですが、1人暮らしの人が、1杯のコーヒーのためにわざわざお湯を沸かしたり、ドリップ式で1杯分だけ作るのは面倒です。

 そこで、その問題を解決するために、ボタン1つで1杯ずつ淹れたての美味しいコーヒーが飲める『バリスタ』や『ドルチェ グスト』などのマシンが登場したわけです」

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「なぜ」を繰り返し『キットカット』が大ヒット >

著者紹介

高岡浩三(たかおか・こうぞう)

ネスレ日本〔株〕代表取締役社長兼CEO

1960年、大阪府生まれ。83年、神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本〔株〕に入社。各種ブランドマネージャーを経て、「キットカット受験生応援キャンペーン」を成功させる。後に『ネスカフェ アンバサダー』など新しいビジネスモデルの構築を通じて、高利益率を実現している。著書に『ネスレの稼ぐ仕組み』(KADOKAWA)など。

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