2016年09月11日 公開
2023年05月16日 更新
このように、胃腸の不調はさまざまな病気のリスクを高めます。では、胃腸を守るためには何が必要なのでしょうか。
胃については、前述のとおり、ピロリ菌の除去が肝心です。加えて、食事の習慣を改善することも大事。まず、朝食は必ず摂ること。朝食を抜くと、その日一日、胃がよく動かなくなってしまいます。少量でいいので何か口に入れ、胃の機能が働き出すきっかけを作ってください。
夕食は早くすませるように心がけましょう。胃は睡眠中に「空腹時運動」という強い収縮をして胃の中を掃除します。このときにまだ食べ物が残っていると、消化に手間取って掃除モードに入れません。遅い時間の食事は、胃の内部を汚れ放題にしてしまう、悪い食習慣なのです。
腸については、小腸の吸収力の低下に合わせて、摂取カロリーを減らすこと。腹八分目よりさらに抑えて、腹七分目に留めましょう。
毎日同じモノを食べないようにすることも重要です。品目数を多くし、日によって食べるモノに変化を持たせると、腸内細菌の種類が増え、免疫力の向上につながります。
また、これまで「常識」とされてきたことが覆されるような事実も、新たに判明しています。
たとえば、キムチや納豆などの発酵食品は腸に良いとされていますが、それはあくまで腸が正常に働いている人の場合です。不調な人、とくに過敏性腸症候群の人が食べると、さらに症状が悪化してしまいます。
過敏性腸症候群の人に適した食事法として、今、注目を浴びているのが「低FODMAP食」です。FODMAPとは、「発酵性のオリゴ糖類」「二糖類」「単糖類」「ポリオール類」の頭文字を組み合わせたもの。これらを避けた食事を3週間摂っていると、8割の人が回復することがわかっています。
過敏性腸症候群の改善にはストレスケアも欠かせません。米国の心身医学会では、不快な記憶や経験を紙に書き出す作業によって、腸の不調やリウマチ、喘息などの症状が緩和した、ということが報告されています。毎晩、心の中の抑圧されたモヤモヤを書き出して言語化する、自己開示の習慣を持つことも、腸の安定に大いに役立つでしょう。
《取材・構成:林 加愛》
《『THE21』2016年7月号より》
更新:11月23日 00:05