2016年07月08日 公開
2022年06月28日 更新
とはいえ、仕事には締め切りがつきものだ。決めない・迷う・ひっくり返す。それはときに、気持ちの焦りや周囲の困惑を生むだろう。しかし、そうしたストレスにも川村氏は肯定的だ。
「いくつもの案を出して生まれた思考の集積から、行きつ戻りつして磨き抜いたプランの中身は極めて濃いものです。安易に即断即決して、『やっぱりああしておけばよかった』と後悔するよりも、よっぽど健全かもしれません。あえて決めない勇気もときには重要でしょう。
また、決めないことのプレッシャーは、周囲との関係にも、最終的にプラスに働くと思います。侃かん々かん諤がく々がくの中で、より深い仲間意識が生まれますから。スムーズに進んだ仕事より、苦心惨憺(くしんさんたん)した仕事のほうが強烈な思い出になり、連帯感も強くなるものです。これもまた、優柔不断の侮れない効用と言えるかもしれません」
『理系に学ぶ。』(ダイヤモンド社)
「根っからの文系」を自認する川村氏が、理系各分野の第一人者を訪ね、その活動と思考法に触れる対話集。養老孟司氏、川上量生氏、若田光一氏など、時代の最先端を行く理系人の発想の源が平易な言葉で語られる。現代人、とくに文系人が陥りがちな閉塞感を打破する視点が随所に登場、「未来を拓く知性」を堪能できる1冊だ。
『THE21』2016年8月号より
取材・構成林 加愛 写真撮影:永井 浩
更新:11月22日 00:05