2016年07月25日 公開
チャットワークはクラウドを利用しているので、さまざまなデバイスから利用できる
――急速に世界中に普及させるために、営業活動をしたり、広告を打ったりもされたのでしょうか?
山本 いいえ。実は、昨年までマーケティング担当者は1人しかいませんでした。いろいろとやってみたこともあるのですが、瞬間的には効果があっても、ユーザー数の伸び具合が継続的に大きくなることがなかったからです。何かしても、しなくても、変わらずにユーザー数が伸び続けてきた、私としても不思議なサービスです(笑)。
広告についても、効果が期待できないので打ってきませんでした。仕事でチャットを使うということは、仕事のやり方そのものを変えることになるので、広告を見たからといって導入する企業はまずないでしょう。
――では、どのような形で世界中に広がったのでしょうか?
山本 取引先がチャットワークを使っているので自分も使うようになり、すると便利なので他の相手とのコミュニケーションもチャットワークで取るようになる、という形でユーザーが増えていきました。
時差があるような遠い場所の相手とのコミュニケーションもスムーズに取れるので、海外の拠点や取引先とのコミュニケーションにも使われるようになり、日本から世界へと広がっていった、という形です。
当社は米国のシリコンバレーにも拠点を持っていることもあって英語版もリリースしていますし、とくに台湾やベトナムのユーザーが多くなったので、中国語版とベトナム語版もリリースしました。ベトナムのユーザーが多いというのは意外かもしれませんが、日本のIT企業のオフショア開発の拠点となっているからです。これから、さらに多くの言語に対応していく予定です。
――これからも営業活動はしない?
山本 今は資金調達もして上場を目指しており、マーケティングも強化しています。マーケティング担当者も10人以上に増やしました。一般的な法人営業やウェブマーケティングもしていますが、とくに注力しているのは他社とのアライアンスです。
たとえば、マネーフォワードさんと一緒に「クラウド経営」などのテーマでセミナーを開催しています。両社のユーザーに出席していただいて、両社のサービスを合わせて使うことのメリットを説明し、どちらか一方だけしか使っていないユーザーにはもう一方の利用もお勧めする、というものです。マネーフォワードさんには全社でチャットワークを導入していただいていて、親しくさせていただいています。
――今後、後発で参入してくる企業と競合することは考えられますか?
山本 参入してくる企業はありますが、なかなか厳しいだろうと思います。リアルタイムでのコミュニケーションを実現するには技術的なハードルもありますし、価格が安いサービスなのでマネタイズの面でもハードルがあります。大手企業が参入したものの、他にやっている事業に比べて、投入するリソースに対する売上げが低いということで、撤退するケースもあります。
さらに、同じレベルのサービスでも、あるいはもっと良いサービスでも、すでに使っているユーザー数が多いほうが選ばれる事業ですから、後発で参入して成功するのは難しいでしょう。
――御社は社名までEC studioからChatWorkに変えられました。他の事業はせず、チャットワークだけでやっていこうということでしょうか?
山本 EC studioという社名は有名になり始めていましたが、社内外に対して、「これが自分たちがやるべきことなんだ」ということをわかりやすく明示するために、社名変更をしました。そのときに、他の事業は無償譲渡、もしくは終了しました。
――先ほどお話しされたように、マネタイズの面では効率の良い事業ではないようにも思えますが。
山本 でも、一度、コミュニケーションのインフラになってしまえば、手放せないツールになりますから。
――料金体系も変えない?
山本 この料金体系でユーザーに納得していただいていますし、当社としてもこの価格でやっていけると考えています。
確かに、ユーザー数が10万社を超えるとサーバーの負荷が大きくなりますし、ダウンさせるわけにはいきませんから、保守管理の人員を強化する必要があります。そのぶんコストがかかってきますから、そのためにも資金調達を行なっているところです。
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更新:11月22日 00:05