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シリコンバレーから世界のビジネスコミュニケーションを変える

2016年07月25日 公開

山本敏行(ChatWork代表)

 

トップ自らシリコンバレーに乗り込み、本気でグローバル化に取り組む

 ――御社はシリコンバレーにも拠点を持たれているということですが、そちらでは何をされているのでしょうか?

山本 マーケティングです。サービスの開発は日本でしているのですが、日本で日本人が開発していると日本のマーケットだけに向けたサービスになってしまうので、シリコンバレーでグローバルのニーズをヒアリングしているのです。そして、普段は日本にいるプロダクトマネージャーをときどき呼んでディスカッションをし、グローバルで通用する仕様設計をしています。

 また、ユーザーのニーズに応えるスピードを速くするためにも、シリコンバレーに拠点を持っていることが重要です。たとえばチャットワークに新しい機能を追加したいとしましょう。日本だけでやろうとすれば、自前で技術開発をしたり、あるいは必要な技術を持っている企業やエンジニアを探して協力してもらったりするのに時間がかかります。しかし、シリコンバレーには技術を持ったベンチャー企業がいくらでもある。彼らにOEMという形でうまく協力してもらえれば、開発のスピードを速くできます。また、彼らは日本のマーケットでの実績がほしいので低価格で協力してくれて、コストも抑えられます。

 ――山本代表は、普段はシリコンバレーの拠点にいらっしゃるそうですね。

山本 シリコンバレーにいる社員は5人ほどで、日本には、この1年で倍増して75人ほどの社員がいますが、私が常駐しているのはシリコンバレーです。日本のほうは役員2人と執行役員1人に統括を任せています。

 なぜシリコンバレーにいるのかというと、本気でグローバル化を進めるためです。日本企業がグローバル化に失敗している大きな原因の一つは、決定権者を現地に置いていないこと。いちいち「日本の本社で検討します」と言っていると、現地の人から相手にされません。

 それに、駐在員がいくら「グローバルな展開のためにはこうするべきです」と日本の本社に訴えても、「売上げも大して上がっていない海外のために、そんなにリソースは割けない。日本市場を優先させよう」となりがちです。日本はGDPが世界第3位と大きく、日本語や独特の商習慣などの非常に分厚い障壁によって海外から守られており、しかもほとんどの企業が東京に集中していますからB to Bの営業活動の効率も良い。日本にいれば、日本市場を優先させたくなるのは当然です。

 しかし、世界のB to B市場の中で、日本の売上げが占める割合はわずか7%。しかも、日本市場はこれからシュリンクしていく。そうなると、これまで日本市場を守ってきた障壁が、日本企業のグローバル化を阻む障壁へと変わるわけです。この障壁を突破するためには、トップ自ら海外の現地に身を置き、グローバルなマーケットを肌で感じることが不可欠だと思います。

 ただ、トップだけが海外にいればいいというわけでもありません。当社でも、私がシリコンバレーから日本にいる社員に向かって「グローバルで通用するためにはこうするべきだ」という話をしても、どうしても「社長は何を言っているんだ?」ということになります。そこで、4~5人ずつ、社員をシリコンバレーに呼んで、1週間、一緒に行動してもらっています。そうすることで、「シリコンバレーマインド」をインストールしているのです。

 

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著者紹介

山本敏行(やまもと・としゆき)

ChatWork〔株〕代表取締役

1979年、大阪府生まれ。97年、中央大学商学部へ入学。2000年、留学先のロサンゼルスにて、パソコンが得意だった弟と一緒にEC studioを起業。帰国後の04年に〔株〕EC studioとして法人化。08年と09年に、2年連続で、〔株〕リンクアンドモチベーションによる組織診断で「日本一社員満足度が高い会社」に認定される。11年、ビジネスチャットツール『チャットワーク』の販売を開始。12年、ChatWork〔株〕に社名変更。米国法人をシリコンバレーのパロアルト市に設立した。

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