2016年06月16日 公開
2023年05月16日 更新
自分の役割が明確になったら、自分が読むべき資料にあたりをつけていきます。
多くの資料には、「基本資料」と「参考資料」があります。「別添」として添付されていることもある参考資料は、事案の概要を把握したあとで参考に読めばいいので、最初は読み飛ばします。それ以外の「基本情報」を中心に目を通します。
最初に読むべき重要資料にあたりをつけるため、私が実践しているのは、「コアとなる1枚」を見つけることです。「コアとなる1枚」とは、これを読めば事案の概要がわかる資料のことです。大体どのような出来事があったのか、何が問題になっているのかがまとめられているような資料がどこかにあるはずです。事案における登場人物や取引関係が整理されている資料も重要です。
コアとなる1枚は、整理されたファイルであれば、「基本情報」が集められた書類の冒頭にあることが多いでしょう。整理されていない場合、どこかに紛れているかもしれませんが、必ずそれに類するものが、どこかにあるはずです。
あるいは、資料を作成した人に、最初に読むべき資料を直接聞いてしまうのも手です。弁護士の仕事では、クライアントから大量の資料がドサッと送られてきます。その翌日に打ち合わせということも多く、ゆっくりと資料に目を通す時間はありません。ただ、送ってくる相手も時間がないことはわかっていますから、聞いてみれば「ここを読んでおいてもらえれば大丈夫」と教えてくれます。
とくに初めての仕事や慣れない仕事の場合は、すでに経験のある先人に聞くのがよいでしょう。恥ずかしがらずに聞いてしまう。これが、重要な情報へ素早くアクセスするためのコツです。
目を通した情報を整理する際においては、感情論と事実の問題を分けて考えることが重要です。たとえば相続問題では、親族間の感情のもつれから、愚痴や悪口が噴出することが多々あります。しかし、感情の問題は法のうえでの解決には関係ありません。「相手の態度が気に食わない」とか「気分を害された」といった感情論は区別して、事実のみにフォーカスするようにします。これは弁護士の書類のみならず、どんな書類を読む際にも心がけるべきことです。
ただし、感情論とはいえ、その人にとっては大事なことなので、あとできちんと耳を傾ける必要があります。そうしないと、
「あの人は聞いてくれない」と思われて、信頼関係を失いかねないからです。また、愚痴や不満の中に問題の真実が隠されていることもあります。感情論は不要という先入観にとらわれず、相手をよく観察することも大事です。
更新:11月24日 00:05