2016年05月11日 公開
2023年01月13日 更新
マイナス金利政策の導入によって、金利収入を主な収益源とする銀行の利益が減少するのではないか、という見方があります。仮に利益が減少すれば、ATM手数料の値上げや貸し渋りが起こり、私たちの暮らしにも影響が出てくる可能性があります。しかし、現時点ではそういった見方は過剰反応です。
今回のマイナス金利導入は、日本で初めて金利がマイナスになったことで注目を集めましたが、EUの中央銀行(ECB)や、スイス、デンマーク、スウェーデンでは、すでにマイナス金利が導入されています。
日本で、マイナス金利が適用されるのは、金融機関が日銀に保有している当座預金約260兆円のうち10~30兆円です。残りのうち210兆円はこれまでと同じように0.1%の金利がつき、40兆円は金利ゼロです。マイナス金利が適用されるのは本当に一部なので、今のところ、ATM手数料の値上げなどは考えにくいと思います。
ちなみに、日本で適用されるマイナス金利はマイナス0.1%なのに対して、ユーロ圏はマイナス0.4%です。また、日本でマイナス金利が適用される10~30兆円という金額は、日本のGDPの2~6%。ヨーロッパでは、それを上回る約8%に当たる額にマイナス金利を適用しています。ヨーロッパはマイナス金利政策を導入して1年あまりが経ちますが、銀行の経営に大きな影響は出ていません。国により状況が異なるので一概には言えませんが、日本の銀行経営への影響も大きなものにはならないのではないでしょうか。
そもそも銀行は、日銀が国債を高く買い取ってくれるので、今回のマイナス金利導入でもトータルでプラスのままです。マイナス金利導入後は銀行株が下がっていますが、それは今回のマイナス金利導入がサプライズであり、その意味を市場が解釈しきれなかったから。ヨーロッパでは、マイナス金利導入の約1年前からその可能性が示唆されていたので、市場の混乱はありませんでした。
更新:11月24日 00:05