2016年05月11日 公開
2023年01月13日 更新
しかし、これには日銀の別の思惑もあります。それは、「円高阻止」です。
為替はさまざまな要因で決まります。中でも影響が大きいのは2国間の金利差です。金利の高い国と低い国があれば、高い国に預けたほうが利息を多くもらえるため、金利の高い国の通貨が買われます。仮にアメリカの金利が変わらず、日本の金利が下がれば、ドルを持つほうが得なのでドルが買われて円安に動きます。円安になればグローバル企業の連結決算の利益が増え、株価も上がります。日銀がマイナス金利を導入した狙いは、ここにあるのです。
本当の狙いが円高阻止にあったことは、マイナス金利導入のタイミングを考えるとよくわかります。年明けから、市場は円高株安が進んでいました。年明けというのは、来年度に向けて春闘の方針や設備投資などの投資計画を練る時期です。この時期に円高株安が進むと、先行き不安から経営者のマインドが守りに入ってしまいます。そうなると賃上げや設備投資に慎重になって、景気に悪影響を及ぼしかねない。それを防ぐために、1月下旬にマイナス金利の導入を決めたのです。
では、実際、市場はどう動いたのか。マイナス金利導入直後は、日銀の狙いどおりに円安株高になりました。しかし、すぐに円高に戻ってしまいました。
思惑どおりにいかなかったのは、タイミングが悪かったからでしょう。マイナス金利導入を決めたのは、中国経済の失速、原油安などが重なり、世界経済の不透明感が増していた時期です。世界経済の不透明感が増すと、リスク資産である株より安全資産の債券にお金が流れます。国債が買われて価格が上がると、逆に国債の金利は下がります。このとき日米の国債金利が同じだけ下がれば問題ないのですが、日本国債の長期金利はもともとゼロに近いため、アメリカ国債に比べて金利の下げ幅は小さく、日米の金利差は縮まりました。それが円を買う動きにつながり、円高株安を招きました。
マイナス金利の導入だけなら、円安株高に動きます。しかし、今回はその効果を相殺してあまりあるほど世界経済の不透明感が強かった。今、足元では、世界経済の不透明感が払拭されつつあります。ですから、これからマイナス金利の効果が徐々に顕在化してくるはず。マイナス金利導入が逆効果だったわけではないので、注意してください。
更新:11月24日 00:05