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「優等生社員のワナ」第2回 「さばく力」から「考え抜く力」へ

2016年04月10日 公開
2023年05月16日 更新

柴田昌治(スコラ・コンサルトプロセスデザイナー代表)

社員が考え抜くことで、会社はこんなに強くなる

社員がこうしたワナから抜け出すと、会社はどう変わるのか。それを教えてくれる元気な会社を最後にご紹介しましょう。

レイモンジャパンは、フランスに本社を置くグローバル企業の日本法人。自動車部品の製造という意味では日本で唯一の外資系メーカーです。売上げは30億円ほどと決して大きくありませんが、非常に高い利益率を誇ります。

その成長を担うのが、ユニークな背景を持つ社員たちです。50名弱のうち、大卒は2名だけ。大半が高卒です。しかも、前職は料理人や運転手、配送業といった異色の経歴ばかり。この社員たちが3DのCADを駆使して最新技術を操り、会社の利益に多大な貢献をしているのです。

偏差値的には決して優等生とはいえない社員たちが、高学歴社員が集まる大企業をしのぐほどの圧倒的な成果を出せるのはなぜか。社員たちが自分の頭で考え、意思決定せざるを得ない環境を会社が作っているからです。レイモンジャパンには、経営トップの社長以外は役職も部署もありません。対外的なものとして個人が自由に「部長」や「課長」を名乗ったりしますが、これはあくまで形式的なもの。社内にあるのはそれぞれの役割と責任です。だから一人ひとりが自分で考え抜いて意思決定するしかない。そして失敗を繰り返しながら、問題解決力を養い、成長するのです。

同社の姿は、問題に直面したらすぐ諦めてしまう「仕事をさばく人」ばかりの会社とは対照的です。社員が考える習慣を身につければ、会社は確実に変わっていくからです。

<第3回は5月9日頃掲載予定です>

(『THE21』2016年2月号より)

(取材・構成:塚田有香、写真撮影:長谷川博一)

著者紹介

柴田昌治(しばた・まさはる)

スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

1979年、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。
1986年に、日本企業の風土・体質改革を支援するためスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。社員が主体的に人と協力し合っていきいきと働ける会社をめざし、社員を主役にする「スポンサーシップ経営」を提唱、支援している。2009年にはシンガポールに会社を設立。
著書に、『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『考え抜く社員を増やせ!』『どうやって社員が会社を変えたのか(共著)』(以上、日本経済新聞出版社)、『成果を出す会社はどう考えどう動くのか』(日経BP社)などがある。

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