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ジャパネットたかた・高田明の「伝える力」(後編)

2016年03月28日 公開
2023年01月23日 更新

高田明(元ジャパネットたかた社長)

「伝わった気」になるのが一番怖い

日本人には「背中で語る」といった、「言葉を発しなくても伝わることを良しとする」美徳もある。

「『あうんの呼吸』といったものですよね。日本人ならではの謙虚さを表わしており、それはそれで素晴らしいことだと思います。
でも、そういう関係になるまではやはり、自分の言葉で伝えなくてはなりません。友人でも夫婦でも、何度も話して、一緒に食事をしたり生活を共にすることでやっと、あうんの呼吸で伝わる関係ができる。最初から言葉を発しなくても伝わると考えたら、何も始まりません。欧米人は自分の意見をどんどん言いますが、日本人も伝えたいことをしっかり言葉にして、しっかり伝えることが重要だと思います」

さらに、伝わったと思っていても、実はそれが「伝えているつもり」になっていることが一番怖い、と指摘する。

「私もいまだに『つもり』になってしまうことがあります。自分ではしっかり伝えたつもりでも、なぜか売れない。そういうときはやはり、振り返って考えてみると、お客さんに伝えたいことをしっかり理解してもらえていないのです。伝えるというのは自分が話したら終わりではなく、相手に伝わって初めて『伝えた』ことになるのです」

 

どうせ未来は読めない。目の前のことに集中すべき

2016年1月に引退した高田氏。最後に、これからの時代を担っていく読者にアドバイスをいただいた。

「今日まで私は、とにかくひたすら『自己を更新する』という思いで毎日、走り続けてきました。過去も、遠い未来のことも考えず、とにかく今を全力で生きる。すると、次にやるべきことが自然と見えてくる。そしてそれをさらにクリアしたら、また次の課題が現われる。このようにどんどん目の前のことを乗り越えていくうちに、ここまで大きくなったのがジャパネットという会社です。

ただ、今まで私がやってきたのはあくまで『自己流』の経営。自分が先頭を走り、あとの人は『背中を見ながらついて来い』というやり方でした。ただ、ジャパネットが1000億円、2000億円と大きくなっていくに従い、『自己流』の経営では限界がくる。そう思い、組織の仕組み作りやノウハウの継承に優れた長男に、事業を引き継いだのです。

今の若い方々は、自分の過去や未来にとらわれすぎているような気がします。とくに今は先がなかなか読みにくい時代です。これから株価や為替がどうなるか、誰も当てられませんよね。会社の未来だって誰もわかりはしません。どうせ読めない未来を心配するより、今やりたいこと、今楽しいと思うことをやればいいのではないでしょうか。

失敗を恐れないことも重要だと思います。失敗と言えば私も何度か、本番中に携帯電話を鳴らしたことがありますよ。しかも電話に出て、『ごめん、今生放送中』って(笑)。まぁ、これは好き勝手にやりすぎかもしれませんが、失敗を過剰に恐れる必要はないと思います。そもそも、失敗というのは、失敗と認めてしまったから失敗になるのだと思います。失敗は乗り越えるべき課題が見えた、ということですから。

情熱を持って走り続ければ、何事もなんとかなる。そういう思いでぜひ、頑張っていただきたいと思います」

(写真撮影:江藤大作)
(『THE21』2016年2月号より)

著者紹介

高田 明(たかた・あきら)

ジャパネットたかた前社長

1948年、長崎県生まれ。大阪経済大学経済学部卒業後、機械製造メーカーを経て、父親が経営するカメラ店へ。86年に独立して「たかた」を設立。90年のラジオショッピングから通信販売に乗り出す。94 年、テレビショッピングにも進出し、業績を伸ばす。99 年、現社名に変更。2013 年には過去最高益を達成し、15年には社長を引退。現在、(株)A and Live代表取締役。番組MCも2016 年1月に引退。

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