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ジャパネットたかた・高田明の「伝える力」(後編)

2016年03月28日 公開
2023年01月23日 更新

高田明(元ジャパネットたかた社長)

日本を元気にする「目利きの力」とは?

前回、言葉だけでなく五感すべてを使って伝えることの重要性を語ってくれた高田氏。インタビュー後編に当たる今回は、「どのように商品を選ぶのか」「その商品から、どのように伝えるべき価値を引き出すか」についてお話をうかがった。自分の仕事だけでなく、日本全体をも元気にするその「目利きの力」とは?

 

2万9800円が人生を変えることもある

モノを売る際には、商品選定もまた重要だ。日々発売される無数の商品の中から、ジャパネットで販売されるのはほんのごく一部。どのような基準で「売れるもの」を選んでいるのか。

「一つはやはり、時代の変化に合った商品を選ぶことだと思います。たとえば私の若い頃にはペットボトルの水も浄水器もなかったけれど、水質汚染が深刻化してからは、これらの商品のニーズが高まってきた。最近なら、ジャパネットでもヒット商品になっている空気清浄機。黄砂やPM2・5の問題がこれだけ大きくなっているからに他なりません。必要な商品は時代の流れとともに変わっていくわけで、そのトレンドは1日ごと、いや1時間ごとに変わっています。こうした流れを読む努力は必須です。

ただ、私は基本的にどんな商品も、作り手の方の思いがあったからこそ生まれており、必要ないものなどないと考えています。だから本当は、作り手がその思いを直接伝えるのが一番いいのですが、それを私が代わりに、作り手の気持ちになって伝えているつもりです。

私は最近、国内外あちこちを歩き回っています。この前はポーランドに行きました。当社が扱っている布団にポーランド産の羽毛を使っているからです。羽毛の生産者の家に行き、卵を産むところや、雛が育つ様子を見学することで、これだけの労力と時間をかけて羽毛ができているという事実をじっくりと感じてきました。つい先日は福井県の鯖江に行き、眼鏡の生産現場を見てきました。これも、生産者の心を自分で見て感じたいと思ったからです。

そうして思いや背景を知れば知るほど、どうやってその思いを伝えようかと、自然と考え始めます。その際、私は『この商品は、どのように人の人生を変えることができるだろうか』『どのように人をハッピーにできるか』という視点を持つようにしています。たとえばカラオケセットという商品は、使えば楽しいですし、歌もうまくなる。声を出してストレスを発散することで、健康にもなるでしょう。でも、それだけではない。

私がよく出す例に、ある女性のお客様の話があります。その方はずっとお姑さんとうまくいっていなかった。でも、あるときジャパネットでカラオケセットを買ってくださったんですね。すると、実はお姑さんがカラオケが大好きで、これがきっかけでとても仲良くなることができた。そんな手紙をいただいたのです。
まさに、その方の人生はこの商品で、価格で言えば2万9800円で変わったわけです。一つの商品には、人の人生を変える力があるのです」

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作り手の予想もしなかったニーズを発見することも >

著者紹介

高田 明(たかた・あきら)

ジャパネットたかた前社長

1948年、長崎県生まれ。大阪経済大学経済学部卒業後、機械製造メーカーを経て、父親が経営するカメラ店へ。86年に独立して「たかた」を設立。90年のラジオショッピングから通信販売に乗り出す。94 年、テレビショッピングにも進出し、業績を伸ばす。99 年、現社名に変更。2013 年には過去最高益を達成し、15年には社長を引退。現在、(株)A and Live代表取締役。番組MCも2016 年1月に引退。

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