THE21 » キャリア » ジャパネットたかた・高田明の「伝える力」(後編)

ジャパネットたかた・高田明の「伝える力」(後編)

2016年03月28日 公開
2023年01月23日 更新

高田明(元ジャパネットたかた社長)

作り手の予想もしなかったニーズを発見することも

作り手の視点に立つことは重要だが、一方で、作り手ではないからこそ、見えてくるものもあるという。

「たとえばボイスレコーダーは一般に、ビジネスマンや学生が会議や授業で使う商品だと思われていますし、メーカーもそう考えています。でも、私はこのボイスレコーダーを子育て中のお母さんに買っていただきました。
最近は共働きのお母さんが多いですよね。小学生の子供が家に帰ってきても、誰もいない。寂しいですよね。なら、ボイスレコーダーに『おやつはここに入っているよ』とメッセージを残しませんか。お子さんも安心しますよね、と提案したのです。結果、大ヒットとなりました。

同様に、大ヒットしているパナソニックの小型電動ハブラシ。一般には10代~30代の女性の方に売れています。彼女たちは1日に歯を2回も3回も磨いていますから、メーカーもこの層を中心に考えていたわけです。
私はこれを、50~60代の方に向けて『8020運動、つまり、80歳になっても20本、自分の歯を残しませんか。そのためにはぜひ、歯を磨きましょう』というメッセージを添えて伝えました。ふたを開けて見たら、さらに上の70歳以上のお客様が8割。メーカーもまさか、この商品が70代以上の方に売れるとは思っていなかったようです。

この『THE21』という雑誌もターゲットは30~40代とのことですが、若者やシニアに売る方法もきっとあるはずですよ」

 

日本企業に求められるのは「世界に伝える力」

このような「ニーズの開拓」ができれば、市場はいくらでも広げることができる。実際、高田氏はこう主張する。

「今後、日本の人口が減っていき、市場がどんどん縮小すると言われますが、提案の仕方次第で、商品を2倍3倍と売り伸ばすことはいくらでも可能だと思います。これからは海外進出だ、という企業は多いですが、私はまだ、日本でやりたいことがいっぱいあります」

ただ、同時に日本が世界に向けて「伝える」ことも重要だという。

「最近よく、『以前は世界一だった日本の製造業も、今では他国に負けつつある』ということが言われます。ただ、私は日本の技術は今でも世界最高だと信じています。ただ、それを世界に伝えていく術が弱いのではないか、と思うことがあるのです。あのスティーブ・ジョブズ氏も『いくら素晴らしいものを作っても、伝えなければないのと同じ』と言っていますが、まさにそのとおりです。

少し話が大きくなりますが、これはビジネスだけでなく、社会全体にとって大事なことだと思います。人間は何千年も戦争を繰り返してきて、今でも中東やロシア、アフリカでは紛争が続いている。もちろん、ぶつかり合いがあるのが人間というものですが、もし、コミュニケーションの取り方をもっと柔軟にしたら、そういう諍いさかいは減るのではないでしょうか。
それは政治家と国民の間でもそうだし、先生と生徒、医者と患者、親子や夫婦も含め、どう『伝えるか』ということが、あらゆる分野で非常に大事になってくると思います」

次のページ
「伝わった気」になるのが一番怖い >

著者紹介

高田 明(たかた・あきら)

ジャパネットたかた前社長

1948年、長崎県生まれ。大阪経済大学経済学部卒業後、機械製造メーカーを経て、父親が経営するカメラ店へ。86年に独立して「たかた」を設立。90年のラジオショッピングから通信販売に乗り出す。94 年、テレビショッピングにも進出し、業績を伸ばす。99 年、現社名に変更。2013 年には過去最高益を達成し、15年には社長を引退。現在、(株)A and Live代表取締役。番組MCも2016 年1月に引退。

THE21 購入

2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

ジャパネットたかた・高田明の「伝える力」(前編)

高田明(元ジャパネットたかた社長)

テレアポで信頼を勝ち取る「15秒間」の話し方

吉野真由美(プレゼン話し方研究所代表取締役社長)

パックン流・相手の心をつかむ話し方

パトリック・ハーラン(タレント/お笑い芸人)