2016年03月27日 公開
2023年07月03日 更新
シーリィ 内面の恐れを解決してくれるアプリなど存在しませんからね。では、「今すぐ」行動を起こすには、どうするか。私がお勧めするのは「ソリューションフォーカス」というアプローチです。
まず、自分がやるべき課題に対して、ゴールを10として、今、自分がどの段階にいるかを考えます。その結果、たとえばまだ「2」の位置にいるとしましょう。そこでまず重要なのは、「まだ2なのか」と落ち込むのではなく、「もう2に到達している」と考えることです。そのうえで、そのステップを一つ上がるためにはどうすればいいかを考えるのです。
つまり、ステップを小さく分けることで、最初の一歩を踏み出しやすくする。そうして一歩ずつ小さなステップを踏み出していくと、徐々に解決のための方法が見えてくるのです。とくに、どの専門家も明確な答えを持っていないような状況では、これが最速で答えに到達するアプローチとなります。
神田 これはすごく重要な指摘ですね。今までは、未来がある程度予測可能だったからこそ、まず予測をし、そこに至るまでのプロセスをコントロールすることで、目標をいち早く達成できた。つまり、ガントチャートを詳細に記載すればするほど、仕事は速くなった。
ところが、最近はガントチャートを作っても、途端に予測しなかったことが起こり、作り直しを余儀なくされる。その作業に時間を取られ、それでも予定どおりに仕事を終わらせようと時間に追われ、ついには心の病にも陥る。今、日本のビジネス界で起こっている問題の多くが、ここに帰結するように思います。
シーリィ ええ。それに対し、まずは一歩だけと考えれば、ゆとりを持って、柔軟に問題に取りかかることができるのです。
神田 先日、「渋滞学」で著名な東京大学の西成活裕教授に、「仕事の渋滞」の話をうかがいました。車の渋滞が、適切な車間距離を取っていないために起こるように、仕事もあまりにギリギリで進めるとかえって渋滞してしまう。アポとアポとの間に少なくとも15分、理想は30分のゆとりタイムを置くべきだ、というお話でした。ただ、実際には多くの組織で、こうした渋滞が起きています。
シーリィ この仕事の渋滞は、人から人へのコミュニケーションの際に発生していると思います。たとえば、ほんの数行で十分なのに、相手は数十ページにわたるレポートが必要だと思い込み、情報がなかなか上がってこない。そうした小さな齟齬が積み重なり、やがて大きなタイムロスにつながるのです。ここで必要なのは、チーム内のあるべきコミュニケーションの形を決めることでしょう。
神田 確かに、戦略や業務改善について議論する会社は多くても、メンバー同士がどうコミュニケーションを取るべきかについて、ちゃんと話し合っている会社は少ない。タイムマネジメントは個人のテクニックの問題だと思われがちですが、実は組織のコミュニケーションの問題のほうが大きい、ということですね。
シーリィ なぜ、話し合いが行なわれないかと言えば、これも「恐れ」のためです。本当は、「仕事の受け渡しの際はこうしてほしい」「この情報はこのタイミングで伝えてほしい」などの要望があったとしても、「断わられる」「バカだと思われる」ことを恐れ、口に出すのをためらってしまうのです。
次のページ
ツールが導入されるほど、仕事が滞るというジレンマ >
更新:11月23日 00:05