2016年03月20日 公開
マーティ氏がJ‐POPへの興味を入り口にしたように、日本人が洋楽から学ぶのもひとつの方法だ。しかし実際のところ、いくら聴いても英語の歌詞が聴き取れないという人は多い。
「それは、『音の乗せ方』に違いがあるから。日本語の歌はひとつの音符にひとつの音が載るけれど、英語はitやweなどの短い単語は音に載せずに一瞬で発音されてしまう。日本人にとってはやっかいですね」
発音の仕方が違う言語のリスニングは難しい、と語るマーティ氏。
「『ミュージシャンは耳がいいから、苦労しなかったんじゃない?』とよく聞かれるのですが、そんなことはありません。日本のバラエティ番組の言葉は、日本で暮らすようになってからも長い間聴き取れませんでした。速いし、大阪弁だし(笑)。なぜ笑い声が起こったのかもわからない。
そこで日本人の先生に協力していただいて、録画した番組をワンセンテンスごとに一時停止して、ひとつずつ意味を聞いていきました。おかげで今は聴き取れます。誰でも、そこまですれば聴けるようになります」
トライし続ければ自分も、誰でも、いつかできる──これはフリードマン氏が常に心していた信条だという。
「日本語を学ぶ外国人がみな苦労するのが『漢字の壁』。どれも一緒に見えてしまいます。しかも数が多い。多くの外国人が挫折していきますが、日本人が皆使えるのなら、僕にだってできるはず。むしろ慣れれば楽しい。壁なんて本当は存在しないのだ、と思っていました」
異質なものを怖がらず、楽しもうとする姿勢がそこにある。
「漢字の見た目は複雑で、アルファベットとはまるで違います。でも僕にはその違いが魅力でした。ミステリアスで美しい。だから読みたくなる、書きたくなる。よくわからないものこそ素敵だ、と感じれば、語学はもっと楽しくなる。皆さんも、そんな気持ちで英語の世界と接してほしいですね」
取材・構成 林加愛
『THE21』2016年2月号
更新:11月10日 00:05