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英文法習得のカギは、ネイティブの「意識の動き」

2016年03月07日 公開
2023年05月16日 更新

大西泰斗(東洋学園大学教授)

 

英語の「意識の動き」をマスターしよう

 再び英語を志そう、英語を話そうとする方々が最初に考えるのはおそらく、「基本的なことだから、中学英語の文法に戻ろう」でしょう。でもそれは良い選択とは言えません。学生時代と同じことの繰り返しになるだけです。大切な語順を学ぶことができませんから。

 語順のルールはとてもシンプル。その気になれば1時間で理解できてしまいます。
 一番大事なのは、英文には、(1)他動型、(2)自動型、(3)説明型、(4)授与型の4つの基本文型があり、すべての英文はこれに基づいて作られているということ(下図参照)。まずはこの4つのパターンを理解することから始めましょう。

 このときに大事なのが、ただ理解するだけではなく、「語順は心(意識)の順番」だということをしっかりと肝に銘じることです。

 たとえば、I met her at a bar in Roppongi.という文を「六本木のバーで……」と考えたら、それは英語ではありません。I met her(彼女に会った)……どこで会ったのか……バーで……どこのバーなのか……六本木の。これが英語の心の動き方です。

 語順に心を沿わせていけば、どんなルールで英語語順ができているかが容易に推測できるようになるはずです。

 英語の意識は、厳密に語順どおりに動いています。She is a student.では、私たちはstudentにaがついていると考えがちですが、ネイティブはa→studentと語順どおりに意識しています。ネイティブは時折、口ごもってShe is a……と言葉を探すときがあるでしょう? studentにaがついているとすれば、aのうしろで口ごもるはずはありませんよね。「彼女の職業を紹介しよう」と考えた瞬間、She is a……までは自動で出てくるのです。だって、職業ですから、そうした人たちが大勢いる中の1人=aがまず意識されるのは当たり前。それから適切な単語を選んで、studentで文を終えるのです。

 英語を話すということは、煎じ詰めると、適切な表現を適切な順番で並べるというだけのことです。だからこそ、語順に対する感性を磨くことが何よりも大切なのです。

 

いきなり丸暗記では話せるようにならない

 英語語順に習熟するためには、「頭で理解」するだけではまったく不十分です。その語順をいつでも作りあげることができるように、徹底的に身体に叩き込まねばなりません。

 具体的には、語順を意識しながら「音読を重ねること」。基本がわかったあとは、数多くの会話文を、最終的には無意識に言えるようになるまで、徹底的に音読し続けることが肝心です。丸暗記ではありませんよ。ネイティブと同じように意識を動かす訓練をする。このトレーニングの目標は、そこにあります。

 この語順音読トレーニングは、同時に、会話力も飛躍的に高めてくれます。トレーニングをしながら膨大な会話文を頭に入れることができるからです。

 なぜ私たちは、なんの苦労もなく、日本語でスラスラと会話ができるのでしょうか。それは、あらかじめ膨大な表現が頭に入っているからです。いくら「to不定詞の名詞的用法」なんていう文法用語を覚えても、会話には役立ちません。浴びるように音読し、ガンガン、文を飲み込んでいく。そこに英語上達のコツがあるのです。

 騙されたと思ってやってみてください。読むこと、覚えること、身体に叩き込むことが、どんどん楽しくなってくるはずです。英語学習はみなさんが楽しんできたスポーツとなんら変わるところがないのです。

 

《取材・構成:川端隆人》
《『THE21』2016年2月号より》

著者紹介

大西泰斗(おおにし・ひろと)

東京学園大学教授

1961年、埼玉県生まれ。筑波大学大学院文芸言語研究科博士課程修了。英語学専攻。オックスフォード大学言語研究所客員研究員を経て、現在、東洋学園大学教授。NHK語学番組の人気講師。

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