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世界で伸びている企業の共通点「LFP」とは何か?

2016年01月14日 公開
2022年05月25日 更新

遠藤 功(ローランド・ベルガー日本法人会長)

 

タスクをこなすことが仕事だと思っていないか

 遠藤氏の著書『LFP』では、グーグルやトヨタ自動車、東レなど、すでに会社や個人としてLFPを実践しているケースが紹介されている。LFPを実践できる組織とできない組織は、いったい何が違うのか。

「最大の違いは、ミッションが明確かどうかです。ミッションとは使命であり、『これを成し遂げたい』という強い想いです。

 多くの日本企業は、社員にミッションを与えず、タスク(作業)だけを与えてきました。現場は上の指示どおりにタスクをこなすだけで、自分で判断する必要がなかったのです。

 しかし、現在のように不確実性の高い時代には、会社の指示が正しいとは限りません。現場の一人ひとりが、ミッション達成のためにすべきことを、変化する環境に柔軟に対応しながら判断しなければ、成果が出せないのです。

 会社がミッションを与えてくれない場合でも、個人としてLFPを実践することができないわけではありません。ミッションそのものを自分で創造すればいいのです。『自分はなんのために、この会社で働いているのか?』という根本的な問いを自らに投げかけてください。その答えがあなたのミッションになります」

 

中間管理職は自らミッションを創り出せ

 とはいえ、とくに中間管理職だと、上からも下からも大量のタスクが飛んで来て、その処理に追われてしまいがちだ。そんなビジネスマンに、遠藤氏はこんなエールを送る。

「日本企業が元気だった頃は、課長が会社を動かしていたんですよ。課長が自らのミッションを持ち、価値を生み出す『成長エンジン』の役割を果たしていたのです。

 管理職なら、自分でミッションを創り出し、自らの判断と行動によってLFPを実践しましょう。部下にもミッションを与え、自分で判断し、行動するように促す。すると、チームとしてLFPが実践できるようになり、成果に結びついて、ミッションが達成される。するとまた新たなミッションが生まれる、という好循環が生まれるはずです」

 このサイクルをも、高速で回すことが重要だ。

「ひと昔前は『考えてからやる』が普通でしたが、それでは遅すぎる。最近は『やりながら考える』が推奨されていますが、私はそれでもまだ遅いと考えています。グーグルなどが実践しているのは、『やってから考える』。先の読めない時代に机上でいくら考えても、わからないものはわかりません。だったら、とりあえず実験的にやってみて、その結果から学習することで、より的確な判断ができます。素早く軌道修正ができるので、仕事の質も上がります。

 多くのビジネスマンは、自分のスピードが遅いことにさえ気がついていないのかもしれません。スピードが遅い会社にいる人は、社内だけを見て『自分は仕事が速い』と満足しているでしょう。しかし、それは会社の『体内時計』に慣らされているだけ。会社の外ではものすごいスピードで時間が流れているのです。LFPという言葉が、それに気づくきっかけになればと願っています」

 

《取材・構成:塚田有香  写真撮影:永井 浩》
《『THE21』2016年2月号より》

著者紹介

遠藤 功(えんどう・いさお)

遠藤功(ローランド・ベルガー日本法人会長)

ローランド・ベルガー日本法人会長。早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現職。経営コンサルタントとして、戦略策定のみならず実行支援を伴った「結果の出る」コンサルティングとして高い評価を得ている。ローランド・ベルガーワールドワイドのスーパーバイザリーボード(経営監査委員会)アジア初のメンバーに選出された。株式会社良品計画 社外取締役。ヤマハ発動機株式会社 社外監査役。損保ジャパン日本興亜ホールディングス株式会社 社外取締役。日新製鋼株式会社 社外取締役。コープさっぽろ有識者理事。『現場力を鍛える』『見える化』(以上、東洋経済新報社)、『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)など、ベストセラー著書多数。

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