2015年12月21日 公開
2023年05月16日 更新
頼りにしていた社員が突然会社を辞めてしまった――。
こうした人材の流出は会社にとって大きな問題。中小企業であれば、今後の業績を左右する深刻な事態になりかねない。
経営者であれば、誰もが一度は経験のある問題といえるが、人事評価制度運用支援コンサルタントの山元浩二氏によれば、こうしたトラブルは会社に「人事評価制度」をつくることで未然に防ぐことができるという。
では、具体的にどんな評価制度を作ればいいのか、お話を伺った。
頼りにしていた社員が突然会社を辞めてしまうようなケース、中小企業ではよくあるはずです。この問題は、人事評価制度で社員の「成長する仕組み」が整えば十分に防ぐことができます。
「人事評価制度があるのに、社員が辞めてしまった」という方もいるかと思います。これは人事評価制度の目的を勘違いしたまま運用しているせいでしょう。人事評価制度をつくる際には、まず、つくるための目的をきちんと理解しなければいけないのです。
そもそも人事評価制度とは、人材を会社の資産として活用するための仕組みです。経営目標を達成した先に、「社員全員が一丸となって、みんなが幸せになる」というゴールを掲げなければいけません。しかし、それがいつしか、昇給や賞与に反映させたり、賃金に格差をつけることを目的に人事制度が運用されるようになる。その結果、社員は不満を募らせ、結果、会社を去っていってしまうことになるのです。
人事評価制度をつくるのであれば、会社のビジョンと目的、目標にベクトルを合わせて、社員全員が本気で取り組んでいける質の高いものを目指さねばなりません。私はこうした人事評価制度を「ビジョン実現型人事評価制度」と呼んでいます。クライアントの人事評価制度の改革プロジェクトを支援する場合も、「みんなで幸せを実現する」ということを必ずゴールに設定しています。
そのうえで、「経営計画書をつくる」「評価制度をつくる」「人事評価制度を運用する」、この3つのステップで作成していきます。以下、この3つのステップに沿って説明していきます。
ステップ1は「経営計画書をつくる」です。まずはA4、1枚の紙に「経営計画書」と「人材育成計画」をまとめます。この1枚の紙にまとめたものを私たちは「ビジョン実現シート」と呼んでいます。
ビジョン実現シートには、「経営理念」「基本方針」「行動理念」「ビジョン」「事業計画」「経営戦略」「現状の人材レベル」「5年後の社員人材像」「ギャップを埋めるために必要な課題」「人事理念」「プロジェクトコンセプト」という11の項目をまとめます。
一般的な経営計画書と違い、「人材育成計画」(「現状の人材レベル」「5年後の社員人材像」「ギャップを埋めるために必要な課題」)を盛り込むことで、人材のレベルアップを実現する仕組みを整えます。会社の将来ビジョンを達成するには欠かせない要素です。
クライアントによっては「大事な経営計画書をたった1枚にまとめてしまって大丈夫か?」と心配する方もいますが、まったく問題はありません。むしろ、1枚にまとめたほうが、より実効性が高くなります。
なぜなら、1枚にまとめることで、会社の全体像がひと目で確認できるからです。各項目の関係性もわかるため、「いつまでに」「どこへ」「どうやって」ということが明確になるのです。さらに、社内やデスクの前に掲示したり、持ち歩いたりすることもできますので、社員に浸透させやすいというメリットもあります。
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更新:11月25日 00:05