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世界の誰よりも早いロボットタクシーの事業化を目指す

2016年01月25日 公開
2021年08月23日 更新

谷口 恒(ZMP社長)

 

すべての道をロボットタクシーが走る必要はない

 

 ――実際のところ、実用化できるところまで技術の精度は上がっているのでしょうか?

谷口 私は、まずは、極力、一般のドライバーが運転する自動車と混在させないようにしようと思っています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのときにはタクシー専用のレーンができるでしょうから、職業ドライバーしか走らない、そのレーンを走らせることを考えています。

 また、全国あまねく、すべての道路を走れるようにしようとは思っていません。たとえば、センターラインが引かれていない道路や歩道と車道が分離されていない道路は危険ですから、走らせるつもりはありません。

 ――走れるところを走ればいい、と?

谷口 そうです。国道と都道府県道くらいの幹線道路だけ走れれば、実用的には十分です。実際、皆さんがタクシーを拾うときは、幹線道路まで出てきているのではないでしょうか。

 ――なるほど。ロボットタクシーの事業について、よくわかりました。他に、御社が注力されている事業には、どのようなものがあるのでしょうか?

谷口 ロボットタクシーの次に皆さんの関心が高いのが、物流ロボットの『CarriRo』(右写真)です。

 メーカーなどの物流の現場も、タクシー業界と同じで、人手不足が深刻です。倉庫の中はほとんど自動化されておらず、人の手で荷物が運ばれているので、作業者の身体への負担が大きい。それなのに、働いているのは65歳以上の方が多いのです。

 CarriRoは台車の形をしたロボットで、経路をインプットしておけば、自動で荷物を運んでくれますから、作業者の身体への負荷を大きく減らせます。また、カルガモのように、1台のCarriRoのあとを複数台のCarriRoがついていくので、作業効率も上がります。

 2016年に量産を始める予定で、すでに130社以上から引き合いがあります。その半数以上が東証1部上場の大手です。

 ソニーモバイルコミュニケーションズさんとエアロセンスという合弁会社を設立して、一般的な4枚羽根のドローンや固定翼のVTOL(垂直離着陸型)も作っています。ドローンといっても趣味用ではありません。土木工事や建築の現場で、工事の進捗の過程を空撮して記録するためのものです。デベロッパーなどに、すでに一部、サービスをご利用いただいています。ちゃんと図面どおりに工事が進んでいるかが確認でき、品質保証になるわけです。

 ――ロボットが日々の仕事の中で活躍しているイメージが浮かんできました。本日はありがとうございました。

 

革新的なサービスを、日本から

 2015年10月1日、ロボットタクシー社と内閣府は、2016年から神奈川県藤沢市で自動運転タクシーの公道での実証実験を始めると発表した。谷口氏にとって、待ちに待った実験だ。

 谷口氏が政府にロボットタクシーの構想を伝えたのは3年ほど前のこと。しかし、法的な問題もあり、なかなか話が進まなかった。そこで谷口氏は、さまざまなメディアの取材を積極的に受け、ロボットタクシーの構想と必要性を説き、講演でも紹介を行なってきた。そしてようやく世論も動き始め、小泉進次郎氏のあと押しも得ることができ、政府が動くに至ったのだ。

 可能な限り早く事業を始めるため、谷口氏はさまざまな手段を取っている。ロボットタクシー社を設立するに当たって合弁相手にDeNAを選んだのも、スピードを重視したからだ。複数のIT企業が関心を示していただが、最も決断が速かったのがDeNAだったのだ。加えて、ロボットタクシー社の社長に就任した中島宏氏(現在、DeNA執行役員オートモーティブ事業部長を兼任)の情熱が決め手だったと谷口氏は言う。

 ZMPで働く技術者は、国内外を問わず募集し、優秀な人材を集めている。採用要件に日本語ができることは入れていない。社内では英語での会話が飛び交っているそうだ。これも、技術開発のスピードを速めるためだ。

 世界に先駆けて、日本でロボットタクシーが実用化されれば、日本の先進性を世界にアピールすることにもなる。その日が来るのが、今から楽しみだ。

 

《写真撮影:まるやゆういち》
《製品写真提供:〔株〕ZMP》

著者紹介

谷口 恒(たにぐち・ひさし)

〔株〕ZMP代表取締役社長

兵庫県生まれ。大学卒業後、エンジニアとして制御機器メーカーで商業車のアンチロックブレーキシステムの開発に携わる。その後、商社の技術営業、ネットコンテンツ会社の起業を経て、2001年、〔株〕ZMPを設立。01年に研究開発用2足歩行ロボット『PINO』、04年に家庭向け2足歩行ロボット『nuvo』、07年に自律移動する音楽ロボット『miuro』を発売。08年から自動車分野へ進出し、09年、自動運転技術開発プラットフォーム『RoboCarシリーズ』を発売。15年、〔株〕ディー・エヌ・エーとの合弁会社ロボットタクシー〔株〕を設立。同年、ソニーモバイルコミュニケーションズ〔株〕との合弁会社エアロセンス〔株〕を設立。

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