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医学博士が教える「脳科学的」第一印象UP法

2015年12月14日 公開
2023年05月16日 更新

吉田たかよし(医学博士)

 

「目が笑っていない人」は表情筋を鍛えよう

 では、システム1は、どのようにして判断をしているのか。それは、過去の経験に基づいています。ですから、その人が生まれてからこれまでにどういう人と会ってきたかで、どういう第一印象を持つかが決まってしまう。たとえば、眼鏡をかけた人にイヤな思いをさせられたことがある人は、眼鏡をかけた人に悪い第一印象を持つ、ということです。こうした経験は人によって違うので、対策のしようがありません。

 とはいえ、個人差のあまりない、誰にでも当てはまる第一印象のポイントもありますから、そちらについては対策を立てることができます。

 まず、表情。とくに、笑顔が与える印象はとても重要です。
 誰でも無意識のうちに、相手の笑顔が本物か、作り笑顔かを見分けています。作り笑いをすると「あの人は目が笑っていない」とわかってしまい、「何か怪しい。危険かもしれない」という印象を持たれてしまいます。

 目が笑っていないというのは、外側眼輪筋という目の周りの筋肉が収縮していないということ。外側眼輪筋は自分の意思でコントロールすることが難しいので、その収縮によってできる目尻のシワによって、本当に笑っているのかどうかがわかります。それを、人は無意識に見ているのです。

 笑うと口角も上がりますが、これは大頬骨筋という頬骨のところにある筋肉の収縮によるもので、自分の意思でコントロールしやすい。つまり、本当の感情を表わしているとは限りません。

 気の毒なのは、作り笑いではないにもかかわらず、外側眼輪筋が衰えているために「目が笑っていない」表情になってしまう人。そうならないために、日頃からこの筋肉を鍛える訓練をしておきましょう。

 具体的には、鏡を見ながら笑うこと。このときに、表情を作ろうとするのではなく、嘘でもいいので、楽しい感情を心の中で作るのがコツです。

 

腕組みや猫背を脳は「警戒」と捉える

 姿勢も大事なポイントです。
 商談のときに腕組みをしてはいけないというのは常識でしょうが、これは脳科学的にも理に適っています。腕組みは無意識に心臓を守る姿勢で、相手に対して防衛的になり、自分を隠そうとするときにしたくなるもの。当然、警戒を示された相手は悪い印象を持ちます。

 猫背もこれと似ていて、骨で守られていない唯一の臓器である腸を守ろうとする姿勢。「心を開いていない」「こちらを警戒している」と受け取られて損なので、気をつけましょう。

 また、歩き方も要注意。うつむき加減、歩幅が小さい、膝が上がっていない、といった歩き方は、「抑うつ歩行姿勢」といって、うつの患者さんによく見られます。それよりも、背筋を伸ばし、大股で、膝を上げて歩く「幸福歩行姿勢」のほうが、印象がいいことは言うまでもありません。

 最後に、声。話す内容はもちろん大事ですが、システム1は声で相手を判断しますから、良い声を心がけましょう。

「良い声」とは、その人にとっての自然な低い声のこと。同じ原稿でも、自然な低い声で読んだほうが良い印象を与えることが、実験でわかっています。

 といっても、もともと声が高い人も心配はありません。脳はよくできていて、たとえ初めて声を聞く相手であっても、その人なりの自然な声の高さをきちんと判断できるのです。ですから、自分なりに無理のない低い声で話せばOKです。

 

《取材・構成:川端隆人 写真撮影:永井 浩》
《『THE21』2015年12月号より》

著者紹介

吉田たかよし(よしだ・たかよし)

医学博士

1964年、京都府生まれ。灘中学校・高等学校、東京大学工学部を卒業後、89 年にNHKに入局。個性派アナウンサーとして『ひるどき日本列島』や野球実況などを担当。NHKを退職後、東京大学大学院医学博士課程修了。本郷赤門前クリニックを開設して院長を務め、受験生を専門に扱う。現在は脳医学や自律神経機能の学習への応用研究に取り組む。著書多数。

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