2015年10月12日 公開
2023年02月15日 更新
人づきあいに悩みがちな人の多くは、コミュニケーションに対する苦手意識があるのではないだろうか。そうでなくても、取引先との雑談やお客さんとのエレベータートークなどは、緊張する人が多いだろう。
そこで、ベストセラー『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』の著者であり、ラジオのアナウンサーの吉田尚記氏に、コミュニケーションが苦手な人でも会話が怖くなくなる話し方のコツを教えていただいた。(取材・構成=塚田有香 写真撮影=長谷川博一)
※本稿は、『THE21』2015年10月号の内容を、一部抜粋・編集したものです。
「人と話すのが怖い」と感じた経験は誰にでもあるはず。とくに、苦手な相手と二人きりになってしまったときなど、感じるストレスは相当なものだ。では、話すことを仕事にしている人は、どうやってこの怖さを乗り越えているのか。
その答えを示してくれるのが、ニッポン放送の人気アナウンサーである吉田尚記氏だ。看板番組をいくつも担当し、どんなゲストとも軽快なトークを繰り広げる吉田氏だが、「実は僕、“コミュ障”だったんです」と打ち明ける。
「『コミュニケーションが怖い』という場合、二つのパターンがあると思います。一つは、初対面の人に会うのが怖い。もう一つは、二回目以降に会う人に『つまらないヤツだ』と思われるのが怖い。
僕も以前は、この両方に当てはまる“コミュ障”でした。何しろ、洋服店に行くのが怖いんですから。店員さんって、必ず話しかけてくるじゃないですか。
『それ、今一番売れてるんですよ~』とか。そんなことを言われても、こちらは『……お、おぅ』となるだけ(笑)。すごく気まずいんです。
でも、この気まずさは誰にとってもストレスですよね。この話をすると、『自分も洋服を買いに行くのが苦手で』と共感してくれる人がすごく多い。あの空気はどんな人だって嫌なはずです。
僕は『そもそも“コミュ障”ってなんだろう?』と思って、ある流行言葉のサイトで定義を調べたんですが、これがよくできている。いわく『コミュ障ができないのは、休み時間などに行なわれる、友人や知人たちとのどうでもいいけど実に楽しげな会話である』と。
つまり、仕事上で必要な事務的な会話はできるが、たいした意味のない会話のほうが難しい。これが“コミュ障”なんです」
この定義を聞いて、「自分も当てはまる!」と思った人は多いはずだ。何気ない会話が苦手なばかりに、職場の上司や部下とギクシャクし、精神的な負担を感じることはよくある。吉田氏も「人間関係はコミュニケーションで100%決まる」と断言する。
「上司や部下との関係がうまくいかなかったり、なんとなく職場で浮いているように感じたとしても、それは自分の性格や周囲との相性の問題ではなく、コミュニケーションの問題です。
では、コミュニケーションに問題があると自覚したとして、どうすればいいのか。それがわからないわけです。
そのサイトには、コミュ障の改善方法についても記述がありましたが、その内容は『自分に対して、ちょっとだけ自信を持ってみる』。そんなこと、できるかーっ!(笑)。だって、自信が持てないから、みんな悩んでいるわけですよ。
とはいえ、僕はラジオのアナウンサーなので、毎日人と会って話をしなくてはいけない。だから、どうすればいいかを必死に考え続け、いろいろな方法を試した結果、『コミュ障はテクニックで克服できる』という結論に辿り着いた。
人間関係がうまくいかずメンタルの悩みを抱えている人も、コミュニケーションの技術を身につけることで改善できます」
では、吉田氏が見出した「コミュニケーションがラクになるテクニック」とはどんなものか。
「『コミュニケーションは“ゲーム”だ』と考えればいいのです。
このゲームのルールは、『敵味方に分かれた対戦型ゲームではなく、参加者全員による協力プレーである』『敵は気まずさである』ということ。
目の前にいる人は対戦相手ではなく、一緒にプレーするチームメイトだと考えてください。『相手を言い負かそう』とか『面白いことを言って笑わせてやろう』と考える必要はありません。相手と協力して気まずさという敵を回避し、互いに気持ちよくなればこのゲームは勝ちです。
コミュニケーションが怖くなる最大の原因は、うまくいかなかったときに『俺はなんてダメなんだ』と自分を全否定してしまうこと。でも、コミュニケーションもサッカーや野球と同じゲームと考えれば、試合に負けたからといって、自分の人格まで否定されることはありません。
ゲームなので負けることもありますが、会話はチームプレーだと考えれば、たとえ気まずくなったとしても、自分一人のせいではなくなる。精神的にもかなりラクになります」
更新:11月23日 00:05