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伝わるストーリーを組み立てる「ノート術」

2015年11月21日 公開
2023年05月16日 更新

清水久三子(Organize Consulting〔株〕代表)

 

A5判ノートに目的とターゲットを書き出す

 用意するのはA5A5判のノートです。その見開き2ページを使って、1回のプレゼンのための情報や思考を整理します。あまりたくさんのことは書けませんが、それがポイントの1つ。スペースを限定したほうが、必要なことを厳選して書くので、整理しやすくなるのです。

 最初に書くのは、そのプレゼンの「目的」、そして「ターゲット」です。

「目的」とは、「相手に期待する行動」のこと。たとえば、「プロジェクトのゴーサインをもらう」「予算を割り当ててもらう」などです。

 目的を曖昧にしたままでは、伝えたい内容を整理する方向性が定まりません。それなのに、目的をはっきりさせないまま資料を作っている人は意外と少なくないのです。必ず目的を明確にするようにしましょう。

 それに加えて、目的を達成するために、相手に何を理解してもらうか、どのような心理状態になってもらうか、などの「ゴール」も書き出しておくとよいでしょう。

 次の「ターゲット」とは、「プレゼンをする相手」のこと。相手がどんな人かによって、どういう情報を盛り込んで、どういう構成で整理すべきなのかが大きく変わります。たとえば、技術に疎い相手に技術のスゴさを詳細に語っても、相手が心動かされることはありません。ところが、そんなプレゼンをする人は世の中にたくさんいます。

 このような過ちを防ぐために、相手に関する情報を事前に集めておきましょう。私が使っている「プロファイリングシート」では、経歴や興味などの「人物像」、自社への「期待」、自社商品に関して相手が持っている「情報」、提案に対する「理解度」などを記入するようにしています。記入できないところがあれば、できるだけ相手に聞いておきましょう。

 目的とターゲットが明確になったら、どのような内容を、どのような構成で伝えるのがいいか、仮説を立てます。この時点で、ノートを見せながらその仮説を上司と共有し、方向性が間違っていないかをチェックしてもらうといいでしょう。そうしておけば、パワーポイントでせっかく資料を作ったのに作り直しを命じられる、ということが格段に減るはずです。

 

「山場」を作って相手を話に引き込もう

 以上を踏まえたうえで、仮説に基づいて、ノートの上で思考をまとめる段階に入ります。

 そのときに便利なのが「メッセージ&ストーリーボード」です。これが、いわば資料の設計図になります。

 まず、一番上の段にメインメッセージを書き、その下に3~4つのサブメッセージを書きます。メインメッセージは「弊社のサービスを導入すべきだ」などの主張、サブメッセージは「なぜなら、コストが削減できるからだ」といったメインメッセージの根拠となることです。これらのメッセージを明確にしたうえで、それを伝えるために必要な情報は何かを考え、書き出していきます。

「メッセージ&ストーリーボード」がひと通りできたら、必ず、話の山場となるポイントを3~4つ選んで、印をつけておきましょう。これには3つの意味があります。

 1つ目は、緻ち 密みつに作るスライドと簡単にすませるスライドを分けるためです。パワーポイントでスライドを作る段階に入ったとき、すべてのスライドを全力で作っていたら、時間がいくらあっても足りません。だから、ノートにまとめる時点で山場を決めておき、少なくとも山場のスライドだけは緻密に作り、他は時間が許せば作り込む、と決めておくのです。

 2つ目は、時間がなくなったときに、どの部分の説明を省くかの優先順位をつけるためです。相手の都合で、急遽、持ち時間が減るのはよくあること。そのとき、山場を決めておいて、そこだけを話せば、最低限のことは伝わります。

 そして3つ目は、相手を飽きさせないため。ダラダラとした説明が続くようだと聞く気を削いでしまうので、あちこちに分散させて山場を作っておきましょう。

 以上を見開き2ページにまとめることができれば、どんなプレゼン資料を作れば相手に伝わるのか、思考が整理されて一目瞭然となるでしょう。

 ここまでしてからパワーポイントに手をつけると、わかりやすい資料を、段違いに短い時間で作れるはず。ノートの段階でじっくり内容を固めて、最後の1時間だけパワーポイントで作業するくらいの意識でいるといいと思います。

 

著者紹介

清水久三子(しみず・くみこ)

〔株〕AND CREATE代表取締役社長

お茶の水女子大学卒業後、大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現・IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、新規事業戦略や人材開発などのプロジェクトを推進。これまでに延べ7,000人のコンサルタントやマーケッターを育成。2013年に独立し、法人研修やセミナー、個人指導も行なう。近著に、『外資系コンサル流「残業だらけ職場」の劇的改善術』(PHP研究所)。

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