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藤巻健史 私が「今はドルを買え」という理由

2015年10月18日 公開
2024年12月16日 更新

藤巻健史(経済アナリスト/参議院議員)

日本経済の「見かけの好景気」に惑わされるな

藤巻健史氏の新刊『国も企業も個人も今はドルを買え!』(PHPビジネス新書)がいよいよ発刊される。なぜ、藤巻氏は「ドルを買え」と主張するのか。そこで、本書のベースとなった「THE21」の好評連載「2020年のサラリーマン・サバイバル術」の第1回(2015年4月掲載)をここに転載。藤巻氏が抱く日本への危機感とは?

 

景気回復は「当たり前」。問題はその後だ

「アベノミクスで、再び景気が上向きつつある」。今年に入り、そんな声が周囲から聞かれるようになった。「異次元」と称された大胆な量的緩和が行なわれ、輸出産業をはじめとした一部の大企業の収益は大幅に回復し、一時は8000円台まで下落した株価は1万9000円を突破した(2015年5月当時)。「この調子でいけば、本当に日本経済は復活するのではないか」という期待を寄せる人も少なくないだろう。

しかし、その期待をそぐようで申し訳ないが、私は、今の日本経済に対して、いっさい、楽観的な見通しを持つことができない。

量的緩和をすれば、一時的に株価が上昇したり、円安で輸出産業の売上げが伸びたりするのは当たり前の話だからだ。政策の良し悪しは短期的には判断できない。出口、つまり量的緩和を終えた時点で、初めてトータルに評価することができる。

そして、そのような視点から考えたとき、アベノミクスの量的緩和は、後々、間違いだったと断罪される可能性が極めて高い。このままいけば、ハイパーインフレが起きて、円が大暴落する──。私は、いまだかつてないほどの危機感を覚えている。

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著者紹介

藤巻健史(ふじまき・たけし)

元米モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)在日代表兼東京支店長,前参議院議員(2期)

1950年、東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。米国ケロッグスクールへ社費留学(MBA)、ロンドン支店等を経て米モルガン銀行に転職。在日代表兼東京支店長。その後、ジョージソロスのアドバイザー等を経て参議院議員2期。一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院で6年間非常勤講師。日本金融学会所属。

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