2015年08月01日 公開
2023年05月16日 更新
すぐに許可をもらわなければならないのに、上司はいかにも忙しそう。やっとの思いで話しかけると……「後にして!」のひと言。タイミングを見計らっているうちに時間ばかりが過ぎてしまう……。そんな経験をしたことのあるビジネスマンは多いはず。
だが、コミュニケーションの達人として知られる栗原典裕氏は「聞いてもらえる切り出し方にはコツがある」と言う。そのコツと「使えるフレーズ」を教えてもらった。
「後にして!」と言われずに話を聞いてもらえるようになるためは、次の二つのスキルを磨きましょう。
一つ目は「デリバリースキル」。「どう話すか」の技術です。
中でも重要なのはタイミングを見計らうこと。相手の機嫌が良いのはどういう時なのか、傾向を知ることと、表情や仕草から心に余裕があるかどうかを観察することによって、話を切り出すのに最適なタイミングがわかるようになります。駆け寄って話しかけることで「重要な話なのだな」と感じさせる、といった方法もあります。
もう一つは「シナリオスキル」。「何を話すか」の技術です。
たとえば、相手に重要な話だと思ってもらうために、「○○商事の件ですが」などと、相手が気にしている具体的な固有名詞を最初に出す。相手に面倒だと思われないために、「2分で終わります」と切り出す、といった技術です。
新しい案件だと面倒でも、すでに相手が関わっている進行中の案件だとハードルが下がるので、「先日ご許可いただいた○○の件ですが」などと、以前の話の続きであることを示すところから始めるのも効果的です。
とはいえ、最強の方法は、常日頃から相手と良好な関係を築いておくことです。たとえば、手柄を渡すなどして普段から上司に「貸し」を作っておけば、困ったときに相談を持ちかけても「あとにして!」と言わず、すぐに手を差し伸べてくれるでしょう。
これらを踏まえ、話の切り出し時に特に役立つ3つのフレーズをご紹介しましょう。
なぜ、「今」、話さなければならないのか。その理由を具体的なタイムスケジュールで表現して話しかけましょう。それでも、機嫌が悪かったり、心に余裕がなかったりすると、話を聞いてくれないこともあります。
そんな時、コミュニケーションの上級者ともなると、話を切り出すタイミングを自分で作ることができます。たとえば、相手が部長の場合、「お茶を入れて」と他の人に頼んで、部長が一服したところで切り出す。「先日はアドバイスをしていただき、ありがとうございました」と言って気分を和ませる。そうした良い刺激を与えると、話しやすくなります。
「あとにして!」と言われるのは、重要だと思われていないからです。「ちょっといいですか?」だけでは、重要な話なのかわかりません。そこで、相手が気にかけていることを「フック」として利用しましょう。会社名、プロジェクト名、人名などの固有名詞を出すのです。
大事な判断を伴う場合は、いくら急ぎであっても、話だけですまさずに書面に残すことも大切です。メールなどでもかまいません。書面に残しておくことで、あとで「言った、言わない」とモメることを防げます。
トラブルがあった時など、「早く報告しなければ!」と慌ててしまうこともあるでしょう。もちろん、トラブルの報告は早いに越したことはないのですが、早く伝えることと、慌てて伝えることは違います。
「どうしましょう!?」とパニックになって話を切り出すのではなく、「あまり良くない報告があります」というクッションを挟むことで、相手にも心の準備をしてもらいます。そして、「マニュアルに沿って対応しています」などと現状を説明します。さらに「ご安心ください」とまで言えるようであればベストです。
(取材・構成 西澤まどか)
(『THE21』2015年5月号より)
更新:11月23日 00:05