THE21 » キャリア » ワタミ桑原社長 ・「欲」を忘れない人が成長する

ワタミ桑原社長 ・「欲」を忘れない人が成長する

2014年03月04日 公開
2023年05月16日 更新

桑原豊(ワタミ社長兼ワタミフードサービス社長)

40代からは「欲」に素直になるべき

 桑原氏は、1998年、39歳でワタミフードサービスに転職する決断をした。当時のワタミは、『和民』の1号店を開店してから6年目で、店舗数はまだ20~30店舗のベンチャー企業。一方、桑原氏は、すかいらーくの子会社である藍屋で、商品開発部長をしていた。仕事は面白く、会社に対して何の不満もなかったという。にもかかわらず、なぜベンチャー企業に転職したのだろうか。その理由は「自分をもっと成長させたい」という欲にあった。

 「創業者の渡邉と初めて会ったのは1997年の暮れ。尊敬する先輩から紹介を受け、会食をさせていただいたのがきっかけでした。正直、ワタミはまだ小さな会社であり、外食の経験は私のほうが豊富だと思っていました。しかし、話していると、渡邉だけでなく、同席した役員も、何かが自分と違うと思ったのです。考えた末に出た結論は、『視点の高さ』が違うということ。渡邉にしても役員にしても、ベンチャー企業だけあって、大きなビジョンを掲げて仕事をしていたので、物事を見る視点が高く、発想が私と違っていたんですね。自分もその環境に行けば、視点が変わり、さらに自分を高めることができるのではないか。そんな思いを抱き、転職することに決めたのです。勇気のいる選択でしたが、今となっては、その選択は正解だったと思います」

 このような自らの経験を踏まえ。40代で認められる人間になるには、「欲」が重要だ、と桑原氏は言う。

 「『こんな人間になりたい』『大きく自分を成長させたい』。若い頃は、誰しもこのような欲や夢を持っているものです。ところが、40代にもなると、現実的になるからか、そうした欲や夢を表に出さなくなると思うんです。しかし、人間、欲がなければ、頑張ろうという気が起きず、リスクのある挑戦をしようという気がなくなります。これでは絶対に成長しません。今よりも成長したいなら、自分の心と素直に向き合って、心の奧に隠していた欲を表に出すことが大切でしょう」

 欲の内容は、自分の中でとどめておいても良いという。

 「欲や夢は知ってもらうことで応援され、仲間が集まり、実現に近づくと思います。しかし、誰でも言えるわけではないでしょう。そんな人は自分の心のな

かで、欲を明確に意識すれば、行動が変わってくるはずです。欲を実現するには健康でいたいと考えますから、身体に気を使うようにもなります。70歳になっても80歳になっても元気な経営者がいますが、それは欲を持っているからだと思いますね。ちなみに、私もまだ喫茶店の夢を捨てたわけではありませんよ。今はワタミの経営にやりがいを感じているので、その夢を休憩しているだけ。将来、老眼にならないうちに、やりたいと思っています(笑)」

 

40代社員の評価は「人間性」で決まる

 20~30代の社員と40代社員では、求められる人材像や評価基準は変わってくるものだ。

 「40代は、仕事のスキル面で比べても、ほとんど差はないと思うんです。20年選手にもなれば、誰でも、仕事の基礎スキルはそれなりに持っていますからね。では、何で大きく差がつくかといったら、「人間性」だと思うのです。謙虚さ、明るさ、素直さ、ウソをつかない……。40代以上になれば、人の上に立って仕事をするようになりますから、人間性の部分が、これまで以上に仕事の成果を大きく左右します。人間として信頼できない人に、ついていきたい人はいませんからね」

 人間性を重視するのは、桑原氏に限った話ではないだろう。人間性は、意識しても、急に変わるものではない。桑原氏は、20~30代の習慣が、40代以降の人間性に大きく影響してくるという。

 「たとえば『約束を守ること』を自分に課し、習慣づける。すると、だんだんとそれがクセになり、40代になる頃には、本当の自分の人格になっていきます。『靴を揃える』でも『あいさつをする』でもいい。いま、20~30代の人には、こうしたことを日課にして、習慣づけることをお勧めします」

 もっとも、40代になっても、心がけ次第で、自分の心は変えられる、と桑原氏は言う。40歳を過ぎてからも、桑原氏は、新たな環境で働き始めるときには、必ず「これだけは意識する」ということを決め、守るようにしてきたそうだ。たとえば、39歳でワタミに転職したときは「前職ではこうだった、とは絶対言わない」ことを自分に課したという。

 「新たな職場で、昔の職場の自慢話を持ち出したら、相手は不愉快に思いますからね。このように、人間性を疑われるようなことを慎む。そんな心がけを日々続けることで、いくつになっても、自分の心は変えることができ、信頼される人になれると信じています」

 

桑原 豊(くわばら・ゆたか)

ワタミ〔株〕代表取締役社長兼ワタミフードサービス〔株〕代表取締役社

1958年、東京都出身。1977年に暁星高校を卒業後、〔株〕すかいらーくに入社、エリアマネジャーとなる。1983年、〔株〕藍屋の創業に携わり、生産部長、商品開発部長、営業部長を務める。1998年、ワタミフードサービス〔株〕(現・ワタミ〔株〕)入社。営業本部長、常務取締役、ワタミダイレクトフランチャイズシステ厶ズ〔株〕代表取締役、ワタミフードサービス〔株〕代表取締役社長COOを経て、2009年より現職。

 

<掲載誌紹介>

2014年3月号

<読みどころ>ビジネスマンにとっての働き盛りである「40代」は、キャリアの集大成に向かう時期です。仕事の経験が蓄積され、ベテランと呼ばれる域に入り、プレイヤーからマネジャーにシフトする人もいます。では、40代から評価されたり、頭角を現わす人と、失速してしまう人は、どこが違うのでしょうか? 今月号では、各界で活躍する方々に、40代をどう過ごすべきか、アドバイスをいただきました。

 

THE21

 

BN

THE21 購入

2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

ベテラン社員に求められる 「7つのスキル&マインド」とは

『THE21』編集部