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ワタミ桑原社長 ・「欲」を忘れない人が成長する

2014年03月04日 公開
2023年05月16日 更新

桑原豊(ワタミ社長兼ワタミフードサービス社長)

『THE21』2014年3月号より》

 

経営ノウハウを学び続けた20~30代

 外食や介護。宅食など、多様な事業を手がけるワタミグループの手綱を取るのが、ワタミ代表取締役社長の桑原豊氏。39歳の時にワタミフードサービスに転職すると、『炭火焼だいにんぐわたみん家』の立ち上げ責任者など重要なポストを任され、2009年、51歳で、ワタミグループ全体の経営を、創業者の渡邉美樹氏から託された。今では渡邉氏に全幅の信頼を寄せられる桑原氏だが、どのように自分を成長させてきたのだろうか。キャリアを紐解くと、40代で認められるためのさまざまなヒントが見えてきた。
<取材構成:杉山直隆/写真撮影:永井浩>

 「もともと、私は、15歳の頃から、自分の喫茶店を出したいと思っていたんですよ。当時は70年代前半。ドトールやスタバはなく、ドリップやサイフォンなどの方法でコーヒーを淹れるコーヒー専門店が東京にオープンし始めた頃です。このとき、とても美味しいコーヒーを出す喫茶店に出合いまして、『こだわりのコーヒーを出してお客様に喜んでもらう喫茶店を自分でもやりたい!』と思ったのです。

 それからは、喫茶店を出すという目標に向かって、行動してきました。高校を卒業すると、目標とする喫茶店に「修業させて欲しい」と直談判しました。断わられても、根気よく頼んでいたら、1年限定なら修業させてもいい、と許可が出まして。通常の半分の給料で、朝7時から夜8時まで働いた後、夜に2時間、オーナーから、美味しいコーヒーを淹れるノウハウを教えてもらう日々を送りました。残り2カ月になった時、オーナーに初めて『コーヒーを淹れてごらん』と言われ、震えながら淹れたコーヒーを『うん、合格』と言われたときの喜びは、今でも忘れられません」

 1年の契約期間が終わると、今度は、開業資金を貯めるために、飛ぶ鳥を落とす勢いだったファミリーレストランのすかいらーくに就職。最初はお金が貯まればすぐに辞めるつもりだったが、半年ほど働くと、「自分は経営のことを何も知らない」ということに気づいたという。

 「資金繰りやスタッフの育成など学ぶことはたくさんある。少なくとも一度は店長にならないと、自分の喫茶店なんて出せないと思いまして。がむしゃらに勉強し始めました。幸い、店長やマネージャーを育成するためのカリキュラムが整備されていたので、カリキュラムに沿って一生懸命取り組みました。当時は毎月、理念や経営数値などに関するレポートを書いて添削を受けていたのですが、現場での仕事と研修で学んだことが結びっき、生きた知恵になることに、手応えを感じられました。のめり込みましたね」

 仕事が忙しいなか、社内の研修にのめり込み、レポートを積極的に書く人など、そうはいない。懸命に勉強したことで、桑原氏は社内でも認められ、営業部のリーダーや食品工場長などを任されるようになった。ワタミ入社後も、それまでの経験が役立ったのは言うまでもない。

 「目的意識、もっと言えば「経営者意識」を持つことは、自分を成長させるために不可欠だと思います。ただ、それは若いうちでなくても良いと思います。タイミングよりも、本気でその意識を持てるかどうかのほうが重要ではないでしょうか」

 こう言うと、「私は、経営者にはなりたくない」という人もいるだろう。それに対し、桑原氏は「万人が経営者を目指す必要はない」と答える。

 「ただ、自分がどんな役割に向いているのか、ということは、早く気づいたほうが良いと思います。リーダーなのか、スペシャリストなのか、それによって、何をすべきかは違ってきますからね。もしわからないのであれば、今、自分がしている仕事のなかで、一番好きなことを考えてみると良いでしょう。おそらく、それが一番向いていること。私も、外食産業で働くなかで、『店長やリーダーってなんて面白いんだろう』と思っていました」

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