
転職理由も転職先を決めた理由も、1位は「給与」
※本稿は、占部礼二 著『志望動機の教科書 就職・転職活動で後悔しないための職業選択ガイド』(インプレス NextPublishing)の内容を一部抜粋・編集したものです。
土台になる職業観は個人的には就職活動の実際に沿っていてとてもしっくりくるのですが、やはり主観的なものである可能性も否定できないと長い間感じていました。
そこで、大学院に入学してから、このあたりの職業選択に関する価値観を表した理論にいろいろ触れましたが、特に近いと感じたのが尾高邦雄氏の『職業社会学』に書かれている職業の三要素です。
①役割の実現
②個性の発揮
③生計の維持
「①役割の実現」は社会の中でどう役割を果たすのか? という視点と捉えると3人称の視点と近いと感じます。
「②個性の発揮」は他者のために自分の能力をどう生かすか? という視点と捉えると2人称の視点と近いと感じます。
「③生計の維持」は個人の生活をどう維持するか? という視点と捉えると1人称の視点と近いと感じます。
若干私の思い込みは入りつつも、3つの方向性については概ね沿っているのではと考えます。
尾高邦雄氏の『職業社会学』が出版されたのは1941年で、それ以来、今日でもこの尾高の職業観を活用した研究が行われています。特に興味深いのが浦上昌則氏が2015年に発表した「大学生の職業観と職業不決断―尾高(1941)による職業の定義に基づいた職業観の把握―」という論文です。
浦上氏は尾高氏の三要素を社会的側面、個人的側面、経済的側面と捉え、この3つの概念についての意識と職業不決断(葛藤、モラトリアム、逃避、など)との関連を明らかにしようとしました。
結論としては、経済的側面を重視し過ぎると不決断傾向が強まってしまうために、バランスよく検討することの重要性を主張しました。私の意見に沿って考えると、業界・職種・企業、バランスよく検討して選択していくことが大事と言えるのではないでしょうか。
職業観の偏りは、学生だけでなく、大人にとってもよく起こりえます。
つい先日、地元のちょっとした同窓会があり、そこで近況報告をし合ったのですが...。出てくる話と言えば給料は? ボーナスは? といった待遇面の話ばかり(笑)。
まあ、照れもあって仕事のやりがいとか、向き不向きとか、そんな話もしにくいのかもしれませんが。マイナビの「転職動向調査2025年版」を見ても、転職理由・転職決定先理由ともに1位が「給与」に関する内容でした。1人称の視点に偏っていないか、冷静に見つめて欲しいと思います。
更新:10月27日 00:05