THE21 » キャリア » 給料だけで仕事を選ぶと失敗する? 職業選びで大切な3つの視点

給料だけで仕事を選ぶと失敗する? 職業選びで大切な3つの視点

占部礼二(キャリア教育・就職支援講師、キャリアカウンセラー)

転職理由も転職先を決めた理由も、1位は「給与」に関するものだという。しかし、待遇だけを重視した職業選択でよいのだろうか。解説してもらった。

※本稿は、占部礼二 著『志望動機の教科書 就職・転職活動で後悔しないための職業選択ガイド』(インプレス NextPublishing)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

尾高邦雄氏の『職業社会学』

土台になる職業観は個人的には就職活動の実際に沿っていてとてもしっくりくるのですが、やはり主観的なものである可能性も否定できないと長い間感じていました。

そこで、大学院に入学してから、このあたりの職業選択に関する価値観を表した理論にいろいろ触れましたが、特に近いと感じたのが尾高邦雄氏の『職業社会学』に書かれている職業の三要素です。

①役割の実現
②個性の発揮
③生計の維持

「①役割の実現」は社会の中でどう役割を果たすのか? という視点と捉えると3人称の視点と近いと感じます。

「②個性の発揮」は他者のために自分の能力をどう生かすか? という視点と捉えると2人称の視点と近いと感じます。

「③生計の維持」は個人の生活をどう維持するか? という視点と捉えると1人称の視点と近いと感じます。

若干私の思い込みは入りつつも、3つの方向性については概ね沿っているのではと考えます。

 

バランスが大事

尾高邦雄氏の『職業社会学』が出版されたのは1941年で、それ以来、今日でもこの尾高の職業観を活用した研究が行われています。特に興味深いのが浦上昌則氏が2015年に発表した「大学生の職業観と職業不決断―尾高(1941)による職業の定義に基づいた職業観の把握―」という論文です。

浦上氏は尾高氏の三要素を社会的側面、個人的側面、経済的側面と捉え、この3つの概念についての意識と職業不決断(葛藤、モラトリアム、逃避、など)との関連を明らかにしようとしました。

結論としては、経済的側面を重視し過ぎると不決断傾向が強まってしまうために、バランスよく検討することの重要性を主張しました。私の意見に沿って考えると、業界・職種・企業、バランスよく検討して選択していくことが大事と言えるのではないでしょうか。

 

その職業観、偏っていませんか?

職業観の偏りは、学生だけでなく、大人にとってもよく起こりえます。

つい先日、地元のちょっとした同窓会があり、そこで近況報告をし合ったのですが...。出てくる話と言えば給料は? ボーナスは? といった待遇面の話ばかり(笑)。

まあ、照れもあって仕事のやりがいとか、向き不向きとか、そんな話もしにくいのかもしれませんが。マイナビの「転職動向調査2025年版」を見ても、転職理由・転職決定先理由ともに1位が「給与」に関する内容でした。1人称の視点に偏っていないか、冷静に見つめて欲しいと思います。

プロフィール

占部礼二(うらべ・れいじ)

キャリア教育・就職支援講師、キャリアカウンセラー

若者の職業選択をテーマとし、「志望動機が書けない」「やりたい仕事が分からない」といった、多くの学生が直面するキャリア形成上の課題に対して、理論と実践の双方から解決を目指して活動している。これまで関東・関西の20の大学において、業界研究や志望動機をテーマとした就職活動支援セミナーの講師を務め、多くの学生に対してキャリア支援を実施してきた。学生一人ひとりの経験や価値観を言語化し、納得感のある進路選択へと導く支援に定評がある。また、5つの大学において非常勤講師としてキャリア関連科目を担当し、2026年4月より群馬県の高崎商科大学にて准教授に就任。キャリア科目を通じて、企業と連携した実践的なキャリア教育に取り組む。

THE21の詳細情報

関連記事

編集部のおすすめ

三大商社は東大・慶應・早稲田で約6割 就職ランキングの現実

山川清弘(東洋経済新報社『株式ウイークリー』編集長)

大卒初任給30万円台が続出!三菱・三井・住友で高待遇なのはどこか

山川清弘(東洋経済新報社『株式ウイークリー』編集長)

氷河期の苦しみを知る『せどりの女王』作者 同世代への熱いメッセージ

高殿円(小説家)

日本の受験エリートは「ポジションを取れない」 “正解を出す力”と“考える力”は別物

楠木建(経営学者), 山口周(独立研究者)

エリートの親ほど「子どものスマホ使用」に厳しい テクノロジーとの理想的な距離感とは

河原千賀(アメリカ在住ジャーナリスト)