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47年間黒字の航空会社が 「ふざけすぎている」行動の裏でぶれなかったこと

池戸裕(ギフト[株]代表取締役)

「人を動かすリーダーの言語化」

優れた理念や戦略があっても、現場が動かなければ成果にはつながらない。その原因の多くは、「何を、誰が、いつまでに」といった基本情報が曖昧なまま共有されていることにあるという。中小企業支援に精通する池戸裕氏に、解説してもらった。

※本稿は、池戸裕 著『人を動かすリーダーの言語化 「ストーリーのある理念」が組織を変える』(三笠書房)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「5W1H」の要素をはっきりさせる

物事を具体的に理解するためには、「5W1H」の要素を明確にすることが欠かせません。「Who(誰が)」「What(何を)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の各情報を正確に把握し、なぜこれらの要素が大切なのかを丁寧に見ていくことで、効果的な理解につなげられます。

特に、複雑な課題や目標をチームや組織全体で共有する場合、5W1Hがきちんと整理されているかどうかが、理解を深めるうえでの大きなポイントとなります。

これらが整理されていないと、各メンバーの解釈にばらつきが生じ、結果として意識や行動の方向性が分散してしまいます。

 

基本の「4W」をおさえておく

まず「Who(誰が)」について。

組織でのプロジェクトや施策を進めるうえで、誰が主導し、誰が関わるのかを明確にすることが必要です。役割が不明確であると、責任の所在が曖昧になり、メンバー間での混乱や責任の押しつけ合いが発生する可能性が生じます。

たとえば、新規プロジェクトを立ち上げる際に、「プロジェクトリーダーは誰か」「各チームメンバーの具体的な役割は何か」が明示されていなければ、行動がバラバラになりがちです。

逆に「このプロジェクトはあなたがリーダーとして指揮を執り、チームのサポート役はこのメンバー」と具体的に示すことで、個々の行動が目的に向かいやすくなります。

次に「What(何を)」の要素です。

何を達成すべきかが曖昧では、行動に対する期待も不透明になります。明確に何を求められているのかを知ることで、メンバーは達成に向けた具体的な行動を計画することができます。

私が関わったブランディングプロジェクトでの事例をあげると、クライアント企業が新たな理念を策定する際、「企業の存在意義を新たに示す」というテーマを持っていたのですが、それが曖昧なために、今一つ意識の統一ができない状態になっていました。

まず明確にさせたのは、手段と目的の違いです。企業の存在意義を新たに示すことは、手段であって目的ではないはず。

そう捉えたときに目的は何かというと、「市場での信頼向上」「顧客のニーズに応える姿勢の強化」など、明確なものが出てきました。

ゴールイメージが共有できたため、各自の行動がまとまり、結果としてプロジェクトが急にスムーズに進み出しました。

目的は何か、その目的が達成されたときの状況はどうなっているのか。その解像度を上げることは、リーダーにとって最も大切な役割の一つと言っていいでしょう。

「When(いつ)」も重要なポイントです。

いつまでに行動を完了するべきか、期限を設けることで、メンバーは具体的なスケジュールを立てやすくなります。期限がないと、やるべきことが先延ばしになり、行動の優先順位が曖昧になります。

そこを「この目標を来月末までに達成するため、毎週進捗を共有する」といった具合に具体的な期限を設定すれば、進行状況が見えやすくなり、個々の行動が着実に積み重ねられます。

意外と、期日を決めずに何かをおこなうことはよくあります。

たとえば「理念を言語化する」といった無形で曖昧なテーマを掲げた場合は、やったこともないうえに、完成形もイメージできないので、期限を区切ることは難しいとなりがち。だからこそ、期日を決めることです。

不思議なことに、イメージができないことであっても、期日を決めると、それまでにどうやったら形にできるかを考え、動いていくのが人間です。

我々のようなクリエイティブ職では、よく「締切に追われる」と言われますが、締切はいいものを作り上げるための重要な要素の一つなのだと、身をもって感じています。

続いて「Where(どこで)」に関しては、物理的な場所だけでなく、業務の範囲や適用される場面なども含まれます。

たとえば、営業チームが新たな方針に基づいて活動する場合「本社エリアでの営業活動に限る」といった具合に、具体的な適用範囲を設定することで、余計な混乱を防ぎ、的確に行動を進めることができます。

限定されることで、可能性が狭まるような感じを受ける方もいるかもしれませんが、実際には逆。むしろアイデアが膨らみます。

その一つとして、この枠の中で自由に考えてみてほしいと伝えたときには、具体的な行動がイメージしやすくなり、ぽんぽんとアイデアが生まれていきます。

 

「Why」は全体の中核をなす存在

最も重要な「Why(なぜ)」は、5W1H全体の核をなす存在と言えます。

理由を理解することで、人は行動に納得感を持ちやすくなります。このため、何かを始める際には「なぜこれをやるのか」「なぜ今なのか」という問いに答える形で、納得を引き出す必要があるのです。

これが明確でないと、たとえ「What」や「When」が定まっていても、行動のエネルギーが十分に引き出せない場合があります。

とても珍しい企業ポリシーを定めている会社として、アメリカのサウスウエスト航空という航空会社があります。1973年以来、特にコロナ以前の2019年まで、実に47年間連続で黒字経営を継続させてきた実績を持つ会社です。

同社が言い切っているのは「お客様第二主義、従業員第一主義」。言葉だけを聞くと驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、その実は「お客様に最も価値を提供できるのは社員であり、その社員に最大限の権限を与えサポートしていく」という方針です。

では、そのポリシーをもとに実際どのように従業員が活動しているのか。これがまた面白く、YouTubeでも動画が拡散されましたが(「サウスウエスト航空」で検索をしてみてください)、機内アナウンスをラップでおこなうCAがいたり、空港職員が戦闘用の迷彩服を着用したりなど、ちょっと変わった取り組みを、社員が自身で判断しておこなっているのです。

こういったユーモアのあるサービスに関して、なかには「ふざけすぎている」という投書もあったといいます。それでも、会社はむしろ「理解いただけない方はお客様ではない」と言い切って曲げずにやってきました。

そんな一貫性のある会社の姿勢に後押しされて、自分自身が得意なことを活かして楽しみながら、お客様のためになることに全力を注げる環境がありました。その結果が47年連続黒字だったのです。

同社は、2001年9月に起きた同時多発テロや景気の低迷で、業界内でリストラや人員整理が多くおこなわれたときでも、一切解雇をすることはなかったといいます。それがゆえに、業績が厳しいときには、自ら減俸を申し出る人もいたというほど。

このように、変わった方針でも、一貫性と信念を持って貫き続けることができれば、他社には真似ができない理念として力を発揮するということがわかります。

 

組織を一つの方向に向かわせるための「How」

最後に「How(どのように)」です。

具体的な行動計画や手順を示すことで、メンバーはスムーズに動き出せます。「これを実現するためには、まずこのステップを踏み、次にこれをおこなう」という形で明確に指示されていれば、行動に迷いが生じにくくなります。組織が一つの方向に向かうためには、Howを具体的に示すことが欠かせません。

どこまで具体的に指示を出してあげたらよいかは、指示を出す相手による部分はあると思います。

しかし、特に業務習熟度が低いメンバーに対しては、PDCA(Plan,Do,Check,Action)のDoに徹することができるような状況をつくってあげることが、最も成果を上げ、成長の速度も増す傾向になるでしょう。

PlanとCheckが自分でできるようになったら一人前。はじめは一緒にやってあげることが、スムーズに人を動かすためには必要なステップです。

以上のように、5W1Hがしっかりと整理され、メンバーに共有されていれば、理解が進みやすくなります。

逆に言えば、これらが曖昧なままでは、どれだけ優れた理念や方針であっても、現場での実行にはつながりません。組織が一丸となって進むためには、まず5W1Hをきちんと整備し、メンバー全員が同じ方向を見据えて進む基盤を築くことが重要です。

この基本をおさえることで、組織の動きがさらに加速し、個々の行動が目標に向かって力強く進むようになります。

プロフィール

池戸裕(いけど・ゆう)

ギフト株式会社代表取締役

2005年、中小企業に特化した採用コンサルティング会社に就職。入社時から中小企業の経営者の採用・組織の課題を聞く中で、好調な会社と不調な会社の決定的な違いの根っこは組織・売上・採用問わず、まずよい経営理念の有無であることを学ぶ。その後、経営課題を根本解決する第一歩となる理念策定・言語化のスキルを身につけるため、コピーライターの道を志す。2010年、コピーライターとして入社した株式会社パラドックスにて、理念言語化からはじめる企業ブランディングの経験を積み、2015年に独立、ギフト株式会社を設立。クライアントワークでは、理念の言語化を軸としたブランディングを通じて「意志を起点にありたい企業を描く」中小企業の経営者を主に支援。300社以上の経営者との対話を活かし、経営にみっちり伴走。売上・成約率UP、採用成功、組織における従業員エンゲージメント向上など、100年続く企業づくりをめざしたブランディング支援によって、数多くの経営改善の実績を持つ。

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