
資産形成YouTuber「不動産アニキ」としても活躍する、不動産投資家の小林大祐氏。とどまるところを知らないインフレと、その根幹に根差す物不足の関係性について、解説してもらった。
※本稿は、小林大祐著『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』(KADOKAWA)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
※本稿は2026年3月時点の情報に基づき著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。
今さら自給自足の社会が訪れるなんてばかげている、と考える読者がほとんどだろう。しかし、今私たちの財布にある1万円は1万円として機能しているが、たとえばゴールドの価値という信用の裏付けがない以上、その価値を担保するものは何もない。
なにしろ、その価値を担保しているはずの日本政府は、借金まみれだ。財務省によると、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」は、2024年12月末時点で1317兆6365億円と発表されている。この借金は主に国民から借りたカネだが、政府はまさに「お前のものは俺のもの」というジャイアン状態で、返済する気などさらさらないように見える。
これはドルも同様で、アメリカの債務残高は、現在目を覆いたくなるほどの水準にまで膨れ上がっている。2005年には8兆ドル程度だった連邦政府の公的債務残高は、24年には36兆ドルを突破した。
コロナ禍のロックダウン時、日米をはじめ各国の中央銀行は大規模な金融緩和を実施し、大量に紙幣を刷って資金を市場に投入してきた。このため、お金の価値が相対的に薄まり、世界中でインフレが進行してしまった。各国の中央銀行が大量にお金を刷った結果、市場に流通するお金が増えすぎてしまったのだ。
ロックダウンにより人々の活動と経済が凍結状態になった後に、突然それが解放されたため、抑えられていた需要が一気に噴き出したことも、インフレを加速させた。行動を制限されていた人々が一斉に動き出し、商品やサービスの購入に走ったのである。
供給はすぐに増やせるものではない。したがって、需要が供給を上回り、価格が高騰するという、教科書通りのインフレが起きたのだ。

この事態に対し、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は金利の引き上げに踏み切った。政策金利は0.25%台から、わずか1年5か月で6%近くにまで引き上げられた。金利を上げることで資金調達コストを高め、企業や個人の借り入れを抑制し、流通する通貨量を減らす。結果として、需要を縮小させ、物価の安定につなげるというのが狙いだ。
しかし、現実には金利を引き上げても、インフレは収束しなかった。なぜならこのインフレは、お金が増えすぎただけでなく、ロシアによるウクライナ侵攻やサプライチェーンの混乱によるエネルギーやモノの供給不足も重なって起こったものだからだ。
需要をどれだけ冷やしても、供給が細っていれば価格は下がらない。これは構造的な問題であり、金利を操作する程度の対策ではコントロールしきれないのだ。
したがって、今求められているのは生産力の回復だ。物が作られなければ、価格の安定も、経済の正常化もあり得ない。金融だけで経済を回す時代は、すでに終わりを迎えている。
この視点で見れば、日本の脆弱性も明らかだ。自給率は低下し、食料やエネルギーの多くを海外に依存している。
万一、輸入による供給が断たれれば、国内で何も手に入らない状況が生まれてしまうだろう。
こうした状況が少し悪化するだけでも、モノ不足とインフレは加速する。それがさらにエスカレートしたときに、原始的な自給自足の世界に逆戻りする可能性を否定できる人などいないはずだ。
かつてのアニメ『はじめ人間ギャートルズ』のようなサバイバル世界が、現実味を帯びてきている。
今のところはまだ通貨の信用が保たれていて、カネさえあればなんでも買えるが、その均衡はいつ崩れてもおかしくはない。通貨に実物資産の裏付けがない以上、「これはただの紙切れだ」と誰かが言い出した瞬間、今までの経済システムは崩壊しかねないという危うさをはらんでいる。


更新:04月24日 00:05