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効率的なAI時代にこそ 人間同士の泥臭いコミュニケーションが輝く理由

山本大平(戦略コンサルタント)

山本大平氏「トヨタの会議は30分」

生成AIの登場によって人間同士のコミュニケーションは減っていくと思われがちだ。だが、「AI時代には『人間臭さあふれるゴリゴリしたやりとり』の価値が見直される」と、戦略コンサルタントであり、『トヨタの会議は30分』(PHP文庫)の著者である山本大平氏は語る。「AI時代のコミュニケーション」について解説してもらった。(取材・文:編集部)

 

人間が自分の頭で考えなくなっている

――前回は「オンライン会議」について伺いましたが、もう一つ、この5年の変化として「生成AI」も無視できません。

【山本】生成AIの登場は、オンライン会議以上のインパクトがあったと思っています。私も、日々、AIを効率化の道具として活用しています。たしかに、文章も資料も「それっぽい正解」を数秒で出してくれますよね。

でも、その便利さの裏側で、おそろしいことが起きていると感じています。「人間が考えなくなっている」ことです。

自分で問いを立てない。自分の頭を使って考えない。前提を疑わない。「それ、何のためにやるんですか?」とすら考えない。AIが出した回答を、思考停止したまま貼りつけて終わっている人も多いのではないでしょうか。

「まとまらないチームのまとめ方」

『トヨタの会議は30分』(PHP文庫)/山本大平 著/935円(税込み)

 

AIの出す回答では、人の心は動かない

――たしかに。AIが膨大なデータをもとに出してきた答えは、どこか「正解」のようなニュアンスを感じます。

【山本】AIが出してくる答えは、統計上の「中央値」です。「異常値」は、はじかれます。つまり、AIからは、多くの人が受け入れやすい無難な答え、おもしろくない回答しか出してこないのです。

読者のみなさんも、AIが出してきた回答やイラストに、どこかで見たことのある既視感、それじゃない感、いかにもAIが作りました的な気持ち悪さを感じたことがありますよね。お客さんである私たちには、すぐにわかってしまうんです。

人間って、実は、異常値に魅かれる側面が強くあるんです。既視感のある無難なものではなく、とがっていたり、見たことのない新しいものだったり、作り手の変なこだわりなどに心を奪われる傾向がありますよね。ご自身のことを振り返っていただくと、心当たりがあるのではないでしょうか。

実は、これからのAI時代には、AIが出せない異常値をいかに残すかどうかが大切になってきます。これは、言い換えると、「生身の人間」「人間臭さ」の価値が見直される時代になっていくということです。

 

新しいものは、泥臭いコミュニケーションからしか生まれない

――AIによって効率化を進めた先に残るのが「人間臭さ」というのは意外です。

【山本】おもしろいですよね。それじゃあ、その異常値というのは、どうすれば生まれると思いますか?

私は「人間同士の泥臭いコミュニケーション」のなかからしか生まれないと思っています。AIとの対話ではできない忖度抜きのゴリゴリしたやりとり、時に衝突なども経て、はじめて新しいもの、いいものが生まれるんです。AIが提案してきた中央値や、人間同士の泥臭いコミュニケーションを経ていない中途半端な妥協案からは、絶対にいいものは生まれません。

でも、異常値=人間臭さを追求しようとすると、会議の参加者同士が絶対に揉めるんです(笑)。おたがいの「こだわり対こだわり」がむきだしになるので。

だからこそ、直接会って、腹を割って話さないといけない。オンライン会議やチャットでは、こうした濃いやりとりは不可能です。つまり、AI時代にこそ、面と向かった濃密な会議が、とても大切になってくるんです。

そのときに、私がかつて勤めていたトヨタで実践されていた、泥臭くて、骨太で、最速で意思決定していく社内コミュニケーション術が大いに参考になるはずです。

 

人材面からトヨタの強さを支える存在「オヤジさん」

――『トヨタの会議は30分』を読んで意外だったのですが、トヨタという会社は、ゴリゴリやりあうのが日常なんですね。上品でスマートな上場企業というイメージが、なんとなくありましたが。

【山本】ゴリゴリやりあうどころか、私が勤めていたころは、毎日怒鳴られていましたね(笑)。今は、だいぶ変わっているとは思いますが。

トヨタの生産現場には、「オヤジ」と呼ばれる強面のおじさんがたくさんいます。この人たちこそ、人材面からトヨタの強さを支える存在です。現場のオヤジさんたちは、とにかく熱い。そして、優しい。そして、ストレートに問題を指摘してくれます。指摘は、ときに怒号に変わります。

トヨタの工場内には、「よい品 よい考」という創業時代からのメッセージが掲げられています。オヤジさんたちは、この言葉を錦の御旗にして、少しでもそこに反するようなことをすると、遠慮なくビシバシ鞭を打ってくれるんです。

車という人の命を預かる商品を作っているということもあり、新人だろうがベテランだろうが、おたがい一切の妥協はありません。生産現場で、そういった泥臭くて、骨太のコミュニケーションがされているからこそ、トヨタは強くあり続けられるのだと思っています。

 

人間同士がぶつかって、はじめて化学反応が起こる

――AIの話から、泥臭いコミュニケーションの話になるとは思ってもいませんでした。

【山本】会って仲よくなることが、仕事のゴールではありませんから。もっとケンカするために会うくらいでちょうどいいと思っています(笑)。おたがいがぶつかって、はじめて化学反応が起こる。それが起こらないなら、仕事をやっている意味なんてないんです。

とは言っても、もちろん不必要な衝突は避けるべきですよ(笑)。いい仕事をするために避けられないピリついた人間関係の対処法も『トヨタの会議は30分』でくわしくご紹介しています。

プロフィール

山本大平(やまもと・だいへい)

戦略コンサルタント

京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、トヨタ自動車に入社し新型車開発に従事。その後、TBSテレビ、アクセンチュアを経て2018年に戦略コンサルティング会社F6 Designを設立。データサイエンスとトヨタ流マネジメントを融合した手法を確立し、企業の経営改革を支援している。

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