
日本を牽引する企業・トヨタ自動車の現場では、「会議は30分」が一つの時間軸になっているという。では、どうすれば時短が可能になるのか?『トヨタの会議は30分』(PHP文庫)の著者で現在は戦略コンサルタントとして活躍する山本大平氏に、「30分で終わる会議の考え方の基本」について語ってもらった。(取材・文:編集部)
――2021年に発売されて、10万部超のベストセラーとなった『トヨタの会議は30分』が、このたび文庫化されました。コロナ禍を経たこの5年で、世の中は大きく変わりましたね。
【山本】そうですね。大きな変化といえば、コロナ禍以降、オンライン会議が当たり前になりました。移動ゼロ、準備も最小。私も最初のうちは「全部、これでいいじゃん!」と思いました。
ですが、みなさんの現実は、どうでしょうか。「会議やミーティングの数は増えたのに、何も決まらない」状況になっているのではないでしょうか。
戦略コンサルタントとして、さまざまな企業の会議やミーティングに出席させていただく機会があるのですが、オンライン会議のいちばんのデメリットは、会議が「決断の場」ではなく、単に「事務的な共有の場」になっていくことです。
「共有できましたね。では、続きは次回」「いったん今日は持ち帰りますね」「もろもろ整理して、また送ります」......。いや、いつ決めるんですか?いったい、だれが決めるんですか?つい、そんなふうに言いたくなってしまいます。

『トヨタの会議は30分』(PHP文庫)/山本大平 著/935円(税込み)
――オンライン会議では、おたがいの視線が合いにくいし、沈黙なのかフリーズなのか、よくわからない瞬間もありますよね。それもあって、会議自体は雑談も少なく短時間で終わる傾向があると思いますが、何も決まらないことも多い気が......。
【山本】そうですよね。そういったオンライン会議のデメリットが認識されたのか、最近は多くの企業で「出社への揺り戻し」「オフィス回帰」現象が起こっています。「やっぱり出社して、面と向かって話さないといけないよね。雑談も大切だよね」みたいな流れです。
――最近、「出社しろ」という圧を、たしかに感じますね。
【山本】でも、それも本質ではないんです。「出社すること」「直接会うこと」がゴールになってしまっています。オフィス回帰にともなって、日本企業では、またコロナ禍以前の「とりあえず集まろう」という非効率な会議が復活しつつあると感じています。
会議の本質は「決めきること」。言い換えると、短時間で、無駄なく、合理的な意思決定をすることです。それができないのに、ただ雑談だけが増えて、会議が長くなってしまったのでは本末転倒。それなら直接集まらないほうが、時間の節約になって、まだマシです。
コロナ禍を経て、いろいろな便利なツールや働き方を手にしたにもかかわらず、私たちの会議スキルは元に戻っている気がしています。だからこそ、今あらためて『トヨタの会議は30分』を読んでいただいて、自分の会社や部署の会議について疑問を持ってほしいですね。
――「会議は30分」というのは、とてもインパクトがあるタイトルですが、山本さんが会議の時間にこだわる理由って何でしょうか?
【山本】「会議は“その企業の鏡”」だからです。会議には、ビジネスに必要な基礎スキルが、すべてつまっていると考えているんです。
戦略コンサルタントとして企業に初めてお邪魔するとき、まず「ランダムに3つくらい会議に出席させてください」とお願いすることがあります。経営者層の会議、部長層の会議、一般社員層の会議といった感じですね。
それらの会議にいくつか参加するだけで、その企業の業績や社員のスキルまで、ほぼわかってしまうんです。
長時間の会議が当たり前になっている企業は、漏れなく低迷・迷走しています。逆に、短時間でサクサク意思決定して前へ進んでいく企業は強いし、業績もいい。データとしても、体感としても、例外はありません。会議って、その企業の文化そのものなんです。
――会議というと、つい「1時間が基本」と考えてしまいますが、本当に会議を30分にできるんですか?
【山本】必ずできると断言できます。
まずは『トヨタの会議は30分』に書いたような基本的なビジネスコミュニケーション術やマインドを実践していただければと思います。すると、それまで何も考えずに1時間に設定されていた会議、ダラダラと長引く会議に疑問を持つようになるはずです。
そこがスタートで、次第に50分になり、40分になり、そして半分になっていきます。場合によっては、「30分でも長いな」と感じるようになるでしょう。
――会議の時間の長さは、多くのビジネスパーソンの悩みの種です。
【山本】会議の時間が短くなると、使える時間が大幅に増えます。仮に、管理職クラスの人なら、1日に会議や打ち合わせが2~3回あることは珍しくないでしょう。年間の平日は、およそ240日なので、うち120日は1日2回、120日は1日3回の会議があると仮定すると、年間600回。
30分×600回=300時間なので、毎回の会議で30分を無駄にするかしないかで、1年あたり、おおよそ300時間もの差が出ることになります。
1日8時間労働と仮定すれば37.5日分。つまり、会議を1時間から30分に短くするだけで、平日換算で2カ月分の時間を生み出せることになるわけです。
――すごい時間ですね。そのうえ、長時間の会議に複数人出ているとなると、その時間×人数ですもんね......。
【山本】その通り。時間だけでなく、お金というコストもかかっています。
1時間の会議を開くとなると、少なく見積もっても、一人あたり7,000円程度のコストがかかると言われています。多大なコストをかけた会議で何も決まらなかったら、時間もお金もドブに捨てているのと同じです。
経営者も中間管理職も、ここに意識を向けないのは本当にもったいないし、知ったうえで放置していたとしたら、まさに「生産性の低い給料泥棒」です。
――会議の時間を短くしていくには、まず何から手をつければいいのでしょうか?
【山本】「報・連・相」という言葉がありますよね。この「報・連」と「相」のあいだに線を引いて、分けて考えるようにしてください。そのうえで「報・連」までは会議ではなく、チャットやメール、ドライブなどでの共有だけで済ませてしまいます。
日本の企業の会議でよく見る光景ですが、事前に資料を共有すればわかるようなことを、わざわざその場で読み上げますよね。発表者以外の人は黙って、死んだ魚のような目をしながら資料を追っているだけの時間です。
これは単なる「報・連」なので、わざわざ会議で共有する必要はないんです。その時間は、ごそっと削ってOK。いや、削る義務があります。
本当に会議が必要なのは「相」だけです。私は、会議の定義を「わざわざ関係者が集まって話し合う必要がある時間」としています。
つまり、メンバーと忖度抜きで意見をぶつけたり、よりよいものにブラッシュアップするために知恵を出したりという場面でのみ会議を設定します。こういった場面でこそ、「面と向かって」の会議が活きてきます。
「相」の会議なら、会議がはじまった瞬間に、前置きなしでいきなり本題に入ることができます。時間の無駄が一切ありません。しかも、顔をつきあわせているので、参加者の様子や表情、全体の雰囲気なども瞬時に確認・判断できます。これは、オンライン会議ではできないことです。
『トヨタの会議は30分』でもご紹介していますが、実際に、私がかつて勤めていたトヨタでは、このように最速・骨太の会議術が実践されていました。
更新:03月07日 00:05