
広い範囲にデジタルを駆使した独自のサービスで、運送業界の効率化を促進するハコベル㈱。アナログが主流だった業界内で、どのように存在感を発揮し、環境を改善しているのか。狭間健志代表に話を聞いた。(取材・構成:川端隆人)
※本稿は、『THE21』2026年4月号の内容を一部抜粋・再編集したものです。
――御社の事業の柱は「運送手配サービス」と「物流DXサービス」だということですが、具体的にはどのようなサービスなのでしょうか?
【狭間】日本には運送会社が約6万社ありますが、8割超がトラック保有数30台以下の小規模な会社で、多重下請構造になっています。そのため、業界全体で需給の最適化ができていません。
また、各社の内部のオペレーションも、いまだに紙や電話、FAXでのやりとりが中心で、アナログなところが多く、効率的とは言えません。
その結果、荷物を送りたいお客様にとっては物流費が高くなり、運送会社にとってはトラックの稼働率が不安定で収益性が低い状態が生まれてしまっています。
そこで当社の運送手配サービスでは、トラックを必要とするお客様と、当社にご登録いただいている運送会社様とを、直接マッチングしています。
まず、荷物を送りたいお客様がウェブ上のシステムに出発地や目的地、日付、時間などを入力します。すると、見積もりがすぐに出ます。さらに細かいオプションも選んで、発注していただきます。
運送会社様は、やはりウェブ上で、今発注されている案件の一覧を見ることができます。そして、「これなら受けられる」という案件を選ぶと、マッチングが成立します。
物流DXサービスは、個々の会社のオペレーションをデジタル化し、効率化するものです。出荷のデータをもとに運行計画を立てる配車のシステムや、倉庫に次々と入ってくるトラックの受付システムなどです。この2つのサービスが、当社の事業の2本柱です。
――荷主と運送業者があらかじめ契約を結んでいるケースも多いと思いますが、スポットでの需要も多いのでしょうか?
【狭間】例えば自動車業界のように生産計画が固まっている業界だと、決まった時間に、決まったルートを、決まった数のトラックが動いています。一方で、食品業界のように、需給に波がある業界もあります。暑い日が続くと清涼飲料水やアイスが想定以上に売れたりするわけです。このように、予測できない需要に対してトラックをどう手配するか、という課題があるのです。
――同様のサービスを提供している他社と比べて、御社の特長は?
【狭間】運送業界では、そもそもマッチングをデジタル化している点が新しいところです。
また、同様にデジタルでマッチングを行なっている他社もありますが、それらは軽貨物と呼ばれる小さな車両だけを扱っているのが現状です。業界の「ど真ん中」と言うべき4トン車や10トン車のマッチングをシステムで行なっているのは当社だけだと思います。
デジタルでマッチングするからこそ、物流DXサービスとの相乗効果も生まれます。物流DXのためのソリューションも、幅広く様々なものを提供しています。マッチングと物流DXの両方をワンストップで提供しているのが、当社の最大の特長です。
――人手不足が言われていますが、手配するトラックの確保は難しくないのでしょうか?
【狭間】先ほどお話ししたように、運送業界ではアナログでのマッチングが主流です。ということは、人件費がかかって、損益分岐点が上がります。だから、単価が高い案件を扱いたい。となると、長距離の案件に照準を合わせることになるのですが、特に不足しているのが長距離ドライバーなのです。
システムでマッチングする当社の場合、もちろん長距離のオーダーもたくさんいただいていますが、地場と呼ばれるような短距離の案件にも注力できるという強みがあります。
――実際のところ、マッチング率はどのくらいなのでしょうか?
【狭間】95%ほどです。荷主企業様から直接受注する上流案件に絞ることも、マッチング率が高い理由の一つです。
――御社は、印刷をしたい人と印刷会社のマッチング事業を展開するラクスルの新規事業として始まりました。まったく違う業界ですが、ノウハウなどの継承はできたのでしょうか?
【狭間】ラクスルのビジョンは、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」。プラットフォーマーとして、伝統的な業界の構造を変革することを目指しています。印刷業界も運送業界も、小規模なサプライヤーが多数いる伝統的な業界という点で共通しています。
ノウハウに関しては、活かせた部分とそうでなかった部分があります。
ラクスルはテレビCMを中心としたマーケティングで成長してきた会社です。これは、顧客が個人だったり、小さな会社だったりしたからです。小さなニーズをマーケティングで集めて、ある程度の規模にしてサプライヤーにつなげる構造です。
一方、当社は、大企業の大きな需要を営業で獲得し、システムの力でそれを細かくして中小の運送会社様や個人のドライバー様に委託するモデルなので、ちょうど逆の構造です。
ですから、ハコベルを立ち上げてぶつかった壁は、いかに営業で仕事を獲得するか、ということでした。
セイノーホールディングスにパートナーシップのご相談をしたのは、全国的に強い営業力とブランドを持っている会社だからです。加えて、田口義隆社長以下、伝統的な業界にあって進取の精神が強く、他社連携にも積極的でオープンな社風の会社です。セイノーとパートナーシップを組めたことは、とても幸運だったと思います。
また、ラクスルの社内で始めた事業だったおかげで、当初から採用力があったのはありがたいことでした。当社の社員の3分の1を占めるエンジニアをはじめ、事業サイドでも、事業開発、営業、カスタマーサクセスなど、各職種で優秀な人材が集まってくれました。
他業種の経験者も多い一方、業界への想いの強い運送業界出身者も多くいます。
特に営業やオペレーションは業界出身者が多く、お客様と共通言語で会話ができますし、現場の解像度が高いので、お客様の課題解決を実現できているのです。
――今後の展望を聞かせてください。
【狭間】運送業に付加価値をつけていきたいと考えています。荷主企業様と運送会社様の両方と広く接点を持っているのが当社の特長です。業務の効率化に限らず、多様な形で付加価値を高められると考えています。
当社のサービスに付加価値をつけることで、それがドライバーの方々の給与にも反映され、人材ももっと入ってきてくれれば、と思います。
――物流の人手不足という社会課題を解決したいという想いは強いですか?
【狭間】解決していけるのではないかと思いますし、何より、解決しなければ世の中の皆が困ってしまいますよね。
ただ、思い上がってはいけないのが、当社が1社で解決できるわけがないということ。当社はソフトウェアには強いですが、ハードウェアは何も持っていません。だから、トラックや倉庫といったハードウェアを持っている、セイノーをはじめとした物流大手の株主の皆様とご一緒させていただいています。
同様に、今後も様々なプロダクトを持っている会社とタッグを組んだり、M&Aをしたりして、事業を拡大し、物流業界に貢献していけたらと思っています。
更新:02月25日 00:05