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変化を拒んだベテラン営業マンの末路 LAD人材が会社を潰す理由とは

布留川勝(グローバル・エデュケーション アンド トレーニング・コンサルタンツ㈱創業者)

「ニュー・エリート論」

日々変化する世の中において、過去の実績があれど変化を迫られる瞬間もあるだろう。その変化を拒んだビジネスパーソンには、どんな未来が待っているのだろうか。布留川勝氏の著書『ニュー・エリート論 世界基準のビジネスパーソンが鍛える6つの知性』(PHP研究所)より解説する。

※本稿は、布留川勝著『ニュー・エリート論 世界基準のビジネスパーソンが鍛える6つの知性』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

変わることを拒む人がたどる道

私はこれまで4万人以上のビジネスパーソンと向き合い、「変わることを受け入れた人」をたくさん見てきた。しかし同時に、変わることを避け続けた結果、キャリアに苦しむ人たちもいた。

たとえば、ある大手証券会社のベテラン営業マンは、入社後10年はまさにエースだった。月間売上トップを何度も獲得し、同期からは憧れの眼差しを向けられ、後輩たちからは「いつか○○さんのようになりたい」と慕われていた。

しかし、彼は自分の「秘伝のタレ」に固執した。表向きは親切に振る舞っていたが、自分が先輩にそう教わってきたこともあって、心の奥底では「仕事のやり方は見て盗むものだ」と思っていた。後輩から具体的な営業手法について質問されても、「数をこなせばわかるよ」と抽象的な答えでかわしてしまう。データ分析やデジタルツールの話題が出ても、「それも大事だけど、やっぱり最後は人対人だからね」と、なんとなく濁してしまう。

彼にとって、自分のノウハウを体系化して教えるより、自分が直接営業に出るほうがよほど効率的だった。「教える時間があるなら1件でも多く回りたい」、そんな気持ちがどこかにあったのかもしれない。

そんな彼を尻目に、入社3年目の後輩がCRM(顧客関係管理)を駆使し、SNSでの情報発信も組み合わせて効率的に顧客を囲い込むことに成功した。後輩はあっという間に彼の成績を抜いていった。タイムパフォーマンスを重視する若手たちは、彼の昔ながらの方法に見向きもしなくなった。

気がつけば、彼は「困った年上部下」になっていた。かつての栄光にしがみつき、変化を拒み続けた結果、誰からも相談されない、誰にも必要とされない存在になってしまったのだ。優秀な人だったのに。謙虚になって、新しいやり方を学ぼうとさえしていればーー。

 

年齢に関係なく陥る停滞のシグナル

先の例が示唆するように、現代のビジネスパーソンにとって最大のリスクは能力不足ではない。変化のスピードに取り残されることだ。年齢は関係ない。20代でも50代でも、気づかぬうちに成長を止めてしまうことがある。実績があっても、経験が豊かでも、だ。

私はこうした状態に陥った人を「LAD(ラッド)人材」と呼んでいる。LADとは、ローカル(Local)・アナログ(Analog)・ダイナソー(Dinosaur)の頭文字だ。

• ローカル(Local:現場根着型)ーー視野が自社や自国に固定され、世界の変化を見落としている状態。

• アナログ(Analog:非デジタル)ーーデジタルやAIを「自分ごと」にできず、旧来のやり方に固執している状態。

• ダイナソー(Dinosaur:恐竜型)ーー過去の成功体験に縛られ、変化に適応できず恐竜化した状態。最大の問題は、その鈍重さに本人が気づかないこと。

この3つが揃ったLAD人材のままでは、これからのビジネス社会において極めて危うい存在になってしまう。なぜなら、世界はすでにグローバル視点で動き、デジタルを使いこなし、柔軟に変化を受け入れる人たちによってかたちづくられているからだ。変化についていけないオールド・エリートは、このLAD人材に陥っている可能性がある。

 

採用担当者が直面する厳しい現実

LAD人材の影響は、本人だけに限定されない。採用の現場からは深刻な嘆きが聞こえてくる。

「最近、一人当たりの採用コストが爆上がりしている。やっと説得して入社した超優秀な理系大学院卒が、半年で辞めたいと言ってきた」

理由は単純だった。社内を徘徊するLAD人材の存在である。年功序列や処遇格差をある程度は理解していた若手であっても、能力や意欲に乏しい人材が高収入を得ている現実を見れば、組織への信頼と成長意欲は大きく揺らぐ。努力しても報われない組織だという失望と、「この会社に未来はない」という冷徹な判断が一気に下される。

その結果、企業は高い採用コストを投じて確保した逸材を早期に失う。そのダメージは本人一人の離職にとどまらず、社内に残る優秀な若手にも不信感が伝染し、組織全体にネガティブな空気が漂う。

つまり、LAD人材が問題なのは本人の成果が低いことだけではない。彼らの存在そのものが優秀層の離脱を加速させ、企業文化を腐食させる負の連鎖を生んでおり、それこそが最大のリスクなのである。

 

ダイナソーの5段階レベル

自分は恐竜になっていないだろうか。心当たりがないか確認してほしい。恐竜化のレベルについて、私は変化への適応度に応じて5段階で整理している。

• (レベル5)絶滅危惧種(ダイナソー型固定思考)ーー外部環境の変化を完全に無視。アナログ依存、ローカル思考が極端。「自分は変わらなくていい」「変化は他人ごと」という姿勢を貫く。

• (レベル4)変化抵抗者ーー新しいやり方を「馴染まない」「意味がない」と否定的に捉え、「昔はこうだった」「自分たちの時代はこれで成功した」と過去に固執。組織内でもブレーキ役になりがち。

• (レベル3)現状維持型ーーいまのやり方で十分と感じている。デジタルやグローバルの必要性は理解しているが、本気では取り組まない。変化を「面倒」「負担」と感じやすい。

• (レベル2)やや慎重な適応者ーー周囲の動向を見ながら追随する。変化に対して好奇心はあるが、一歩目が遅れがち。必要に迫られれば変わるが、自ら仕掛けることは少ない。

• (レベル1)恐竜を脱皮中の探求者ーー新しいツールや価値観を受け入れ始め、「まず試してみる」が自然にできるようになりつつある段階。過去の成功体験にとどまらず、それを更新しようとする意識が芽生え始めている。

LAD人材は、自分のこれまでの価値観や行動様式が揺さぶられることに強い不安や拒否反応を示しがちだ。そのため、「変わろう」といった提案をされると防衛本能が働いて、否定や反発、無視といった態度を取りやすくなる。本書を読んでいるいま、「自分には関係ない」「それは非効率だ」「そんなことは無理だ」といった感情が生まれてきているなら、それはあなたがLAD人材に陥っているサインかもしれない。

プロフィール

布留川勝(ふるかわ・まさる)

グローバル・エデュケーション アンド トレーニング・コンサルタンツ㈱創業者

2000年に「グローバル人材育成を通して日本に貢献すること」を目的に、グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社を創業。世界中の教育機関やビジネスパートナーとの協働を通じて、400社以上の企業向けグローバル人材育成プログラムの企画・開発・コーディネートを手掛ける。2020年に同社の代表を退任後も、企業向けプログラムの講師・コーチとして活躍。著書に『パーソナル・グローバリゼーション』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『gALf な生き方』(クロスメディア・パブリッシング)ほか。

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