
先行きの不透明な時代、学び直しの重要性は増している。学び直しを始める際、何を頼りにすればよいのだろうか。国のリカレント教育施策を主導する文部科学省の片見悟史氏に、学び直しの場の見つけ方について語ってもらった。(取材・構成:木村昭徳)
※本稿は、『THE21』2026年3月号特集[圧倒的な差がつく「学び直し」]より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
※前後編の後編です
仕事を前提とした学び直しだけでなく、人生をより良いものにするための学び直し全般を総称して、リカレント教育といいます。職業とは直接関係のないスキルや教養についての学習も包括する概念です。
仕事と関係しない分野の学習をする意義について、疑問を持つ方もいるかもしれません。ただ、文部科学省が教育や日本の将来像において重要なテーマとしている「ウェルビーイングの向上」を実現するためには、こうした学びも重要です。
ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良い状態を指します。VUCAの時代を安心して生きていくためには、多角的な視点から将来を予測していくことが欠かせません。
そうした多角的な視点というのは、職業に直結する狭い分野を学んでいるだけでは、なかなか身につくものではありません。新しい分野に触れることは、自分の人生を見つめ直すきっかけにもなりますし、チャンスを広げることになるはずです。
また、これまで交流のなかったような人たちとの人脈を獲得することにもつながります。特に定年後を意識し始めた50代くらいの方にとっては、非常に大きな意義があるのではないでしょうか。
大学のラウンジで、社会人向けのカリキュラムに参加された人たちが一緒にお茶をしている現場に出くわすことがあります。学び直しが人生の豊かさにつながっていくことを実感できる光景です。
自分の人生における学びの方針が決まったとして、どのように学び直しの場を探せば良いのか。
それに対し文部科学省では、「マナパス」というポータルサイトを用意しています。大学などのリカレント教育プログラムについては、こちらから探していただくのが良いでしょう。キーワードや職種から、社会人が受講可能な大学などのカリキュラムを一括検索していただくことが可能です。
学び直しの障壁として、時間やお金という問題があると思いますが、給付金や奨学金を受けられるもの、オンライン受講が可能なものなどに絞って検索することもできます。近いうちに、AIに相談しながら、お勧めのカリキュラムを探せるような仕組みも導入していく予定です。
ただ、マナパスで探すことができるのは、あくまで大学などのカリキュラムのみとなってしまいます。民間の企業や団体が行なっている講座も多いですから、経済産業省の「マナビDX」も活用してほしいと思います。
また、職業情報を総合的に提供する厚生労働省の「job tag」というサイトもあります。今後、関係省庁に分散する情報提供サイトの連携・一体化を通じて、包括的で利便性の高いポータルサイトの構築が検討されることとなっています。
先にも触れたように、日本の企業では、学び直しによるメリットが見えにくいという現状があります。
ただ、学び直しを通して可能性を広げ、ビジネスチャンスを手にしたり、新しい道を見つけたという人は少なくありません。マナパスには様々な体験者のインタビューも掲載されているので、学び直しをすることで、自分の人生がどう変化するのかイメージできない方は、そうした体験談を読んでみても良いと思います。
例えば、大学の短期プログラムに通い、そこで教授と親しくなってより深い専門性の必要性に気づいたという人がいます。
ビジネス書などを読めば表面的な知識は得られます。ただ、深い理解を得ようとすれば、やはり腰を据えた学習が必要です。その体験談の人物は、そこから大学院に進学し、研究を続けながら、その知識も活かして、今、ビジネスを展開していっています。
他にも、別の仕事をしながら、あるいは子育てをしながら、通信教育で国家資格を取得し、夢を実現したという人もいます。資格の取得はわかりやすく自分の可能性を広げる助けになってくれるでしょう。すでにある分野で活躍している人でも、新しい視点を組み合わせて、さらに仕事の幅を広げることができたという例もあります。
であれば、一見関係のないような分野の知識が、自分の仕事や私生活に活かせないかを考えてみるのも良いのではないでしょうか。やはり、こうした体験談を見ていっても、自分のライフプランを明確にすることが、まずは重要であると感じられます。学び直しを通してより良い人生を手に入れるためには、自分はどう生きたいのかを考えることから始めるのが、一番の近道になるはずです。
更新:02月12日 00:05